総裁選ドキュメント

各候補の発信力は? 現役放送作家の茨大教授が分析

 自民党総裁選が17日、告示され、河野太郎ワクチン担当相(58)、岸田文雄前政調会長(64)、高市早苗前総務相(60)、野田聖子幹事長代行(61)の4候補が出そろった。現役の放送作家でもあり、報道番組も手掛けた茨城大人文社会科学部の村上信夫教授(63)=メディア論=に各候補の人物像などを分析してもらった。

 覚悟、計算、明るさ

 総裁選出馬を最初に表明したのは岸田氏だった。「蛮勇をふるった覚悟はすごい。後は桶狭間の戦いに勝利した織田信長になれるかどうかだ」と村上教授。

 自身がかつて、民放テレビ番組のプロデューサー時代にキャスターで起用したのが高市氏。旧知の間柄で、「総裁選はもう少し後で挑戦するかと思っていたが、勝負勘は悪くない人。何かしたたかな計算があるのかも」と分析する。

 河野氏に関しては「あの明るさは武器。政治家の人気はどれだけ人を集められるかで決まる。一方で菅(すが)義(よし)偉(ひで)政権の失政とされるコロナ対策の担当であったことは少し気がかり」とする。

 ぎりぎり、悲願の総裁選出馬となった野田氏については「不妊治療や子育てを経験しており、自民党のトップに立てば選挙で女性票を一番集められる。“酒豪キャラ”も親しまれそうだ」と見る。

 ソーシャルメディア駆使

 菅政権ではコロナ禍をめぐる対応で、いわゆる発信力の弱さが指摘された。

 河野氏については「メディアの露出が多いが、発言はわかりやすい。ツイッターを次々と更新し、フォロワー数も240万となっている」。岸田氏に関しては「ユーチューブで発信したり、単独インスタグラムも行ったりと自分を変えていこうと努力している」と評価する。

 野田氏は「言葉が端的で、分かりやすい。ホームページでも動画を使うなど発信力は高い」と分析。高市氏には「メディアをよく知っている人。総裁選でも何か(形勢を)逆転させるような発言を用意しているのでは」と期待する。

 自民に仕掛け人?

 4人が争う今回の総裁選は世間やメディアの注目を集め、結果的に菅政権への批判も薄まりつつある。「衆院選も乗り切れそう。もし自民党にだれか選挙の仕掛け人がいたとしたら、すごい。名プロデューサーだ」と村上教授。

 一方で、自身が今夏新型コロナに感染し、一時は重症となって苦しんだ経験から「新政権には国民の命にちゃんと向き合う政治を期待したい」と切に願う。「この2年で仕事を失った人、夢をあきらめた学生が大勢いる。みんながもう一度希望を持ち、可能性を信じられるような世の中にしてほしい」と結んだ。(三浦馨)

 【むらかみ・のぶお】昭和33年、東京生まれ。立教大大学院修士課程修了。自動車メーカー勤務後、放送作家となり5千タイトル以上の番組を手がけたほか、映画、CM、舞台などで活躍。平成24年から茨城大教授。

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