総裁選ドキュメント

各候補は所見発表演説で何を訴えたか

 自民党総裁選に立候補した4氏が17日、党本部で開かれた所見発表演説会で重視する政策などを訴えた。「発信力不足」を批判された菅義偉首相が不出馬に追い込まれた直後だけに、自らの言葉で丁寧に語り掛ける姿勢が目立った。

 「『保守』とは度量が広く、中庸で温かいものだ」。河野太郎ワクチン担当相が冒頭に言及したのは保守政治家としてのアピールだった。持論の「脱原発」や前例のない「女系天皇」を容認するかのような態度が、保守層を中心に不安が広がっていることへの懸念を意識したとみられる。

 ただ、異端児らしさを失えば従来の支持者が離れかねない。演説会では再生可能エネルギーの普及に意欲を示す一方、原発には触れなかった。また、新型コロナウイルスのワクチン接種回数の増加などに触れ、実行力が長所だと訴えた。

 「求められているリーダーは私だと強い確信を持ってここに立たせていただいている」。昨年の総裁選で首相に惨敗した岸田文雄前政調会長が打ち出したのは「強さ」だ。「地味で指導者として頼りない」との評判を打ち消すため、君子豹変(ひょうへん)を印象づけた。「自助の精神は大切だが、一人では生きていけない」とも主張し、「自助」を掲げた首相との違いを強調。広島での年配女性との交流を方言を交えて紹介し、地元愛もアピールした。

 高市早苗前総務相は「国の究極の使命は国民の生命と財産、領土・領海・領空・資源、国家の主権と名誉を守り抜くことだ」と切り出した。

 北朝鮮による拉致問題解決と憲法改正の必要性にただ一人言及。「大切な国民を取り戻すために自民党が一体となって懸命に取り組んでいこう」「時代の要請に応えうる新しい日本国憲法の制定に力を尽くしていく」と語った。保守政治家としての立ち位置を明確にし、岩盤保守層らを取り込む戦略だ。

 最後に演説した野田聖子幹事長代行は3候補の訴えについて「国民の生活、暮らし、生命や健康に直結するテーマが少ない」と述べ、「多様性社会」を掲げて差別化を図った。

 少子化対策を重視する姿勢を示し、「子供支援の司令塔として『こども庁』を設立し、教育、保育、貧困問題の解消など子供への投資を積極的に行う」と主張。女性活躍推進の観点から閣僚の半数に女性を任命するとも述べた。(内藤慎二)

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