真山仁の穿った眼

新生銀行へのTOB 亡霊の復活なのか、金融新時代の到来なのか

真山仁
真山仁

 バブル崩壊を歴史として語る時

 本当は日本の財界の大物が暗躍していて、その人物が、いかにも外資系ファンドが長銀を奪取したように見せただけだという“伝説”も聞いた。

 『ロッキード』に挑んだ時、「事件から40年以上も経過して、何を今更」という批判があった。だが、実際は、それだけの年月を経て「事件が歴史になった」から、浮かび上がった事実が無数にあった。

 山一證券破綻をバブル崩壊の始まりだとすれば、あれから既に23年が経過している。そろそろバブル崩壊を歴史として語る時がきているのではないのか。

 そんなことを考えている最中に、“バブルの亡霊”が新聞紙上を賑わせたのだ。TOBをかけられた新生銀行は、多くの専門家が言及しているように、1998年の経営破綻以来、注入された公的資金約3500億円を返済していない。未返済の銀行は新生銀行だけであり、今なおバブル崩壊を背負っている唯一の銀行と言える。

 今回の事件は、バブルの亡霊が久々に世間に姿を見せたということなのか、あるいは、SBIが目指す金融新時代の幕開けなのか――。その点も気になるところだが、私にとってはやはり、“バブル崩壊”を書く秋(とき)が巡ってきたということなのかと、密かに戦(おのの)いているのである。

昭和37年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者とフリーライターを経て、企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で小説家デビュー。同シリーズのほか、日本を国家破綻から救うために壮大なミッションに取り組む政治家や官僚たちを描いた『オペレーションZ』、東日本大震災後に混乱する日本の政治を描いた『コラプティオ』や、最先端の再生医療につきまとう倫理問題を取り上げた『神域』、「震災三部作」の完結編となる『それでも、陽は昇る』など骨太の社会派小説を数多く発表している。初の本格的ノンフィクション『ロッキード』を上梓。近著に、東南アジアの軍事政権下の国で「民主主義は、人を幸せにできるか」を問う長編小説『プリンス』がある。最新作は政治経済・教育・メディア・若者など、現場に足を運びさまざまな視点から日本社会の現在地を描く『タイムズ』。

【真山仁の穿った眼】はこれまで小説を通じて社会への提言を続けてきた真山仁さんが軽快な筆致でつづるコラムです。毎回さまざまな問題に斬り込み、今を生き抜くヒントを紹介します。アーカイブはこちらから。真山仁さんのオウンドメディア「真山メディア-EAGLE's ANGLE, BEE's ANGLE-」も随時更新中です。

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