コロナ禍に伴う在宅勤務でもSaaSは役立った
「新型コロナ感染症の拡大を受けて、日本企業の多くが在宅勤務へと移行した。在宅勤務でも生産性高く仕事をするためには気軽なコミュニケーションを実現するビジネスチャットツール、オンラインでのスムーズな会議を実現するWeb会議ツールなどを上手に取り入れることが重要だ。また、これまで紙で行われていた管理業務の電子化が必須となり、電子契約や社内稟議・ワークフロー、経費精算、勤怠管理などのSaaSの需要も急速に高まった。特に電子契約の領域は4月17日にGMOインターネットグループが印鑑手続きの完全廃止を発表するなど、急速に電子化が進んでいくだろう」
コロナ禍で日本経済も打撃を受けた。終息後のポストコロナでの日本経済再生にSaaSの普及はどう寄与するとみるか
「在宅勤務への移行に伴いSaaSの導入は急速に進んだ。SaaSはそもそも業務の効率化・高度化を実現するツールのため、コロナ禍においてある種強制的に活用が進むことで日本企業全体の業務レベルが大きく引き上がると考えている。先述のコラボレーションや管理業務へのSaaS導入に加え、たとえば営業やマーケティング領域においてもデジタル化が進んでいる。結果として、ポストコロナでは一人ひとりの生産性が大きく向上し、限られた時間の中でより大きな成果をあげられるようになるだろう。また、リモートワークや副業も今まで以上に当たり前となり、優秀な人材が活躍する舞台もどんどん広がっていく」
サービス連携でM&A進展
最近の業界のトレンドは?
「サービス連携だ。API(アプリケーション プログラム インターフェイス)連携と呼ばれる動きが当たり前になってきている。常にいい機能を作り続けるSaaSは、特定の機能で得意なプレイヤーが尖っていくビジネスモデルなので、すべての機能を1社がつくるというのは非効率。そのため、積極的に連携していく動きが見られる。一方でユーザー側としては一気通貫でいろいろな機能が連携していてほしいというニーズがあり、サービス連携が進み始めている。その流れでM&A(企業の合併・買収)も進んでいくと思う。マネーフォワードやSansanといったメガSaaSベンチャーともいえる存在が中心になって、さまざまなSaaS企業をグループ化し、強いプラットフォームを作っていく動きも進んでいくのではないか」
SaaSビジネスを成功させるうえで何が鍵を握っているか
「カスタマーペインを正しくとらえることだ。ユーザーがどういう課題を抱えているかを正しくとらえるということ。なんとなくSaaSビジネスを始めてしまうと、コンセプトがぶれてしまい、必要な機能の優先順位もつけづらく、いいサービスが出来上がらない。これに対して、きちんとユーザーの課題を理解して機能開発を適切な順番でできている会社は強い。SaaSは販売方法の正攻法もあるので、国内外の先進事例を学びながらベストな組織体制と営業体制を組んでいくことも成功するためには必要だと思っている」
SaaS業界としての課題は?
「中小企業に普及していくことだ。今は、東京のIT企業や大企業のように、ある程度ITリテラシーが高い企業にしかSaaSは利用されていない。そうなるとマーケットサイズも限られてくるので、これまでITを全然使ったことがない地方の中小企業にも普及していくことが業界全体の取り組みとして必要だと思っている。米国はITリテラシーが高いので自然とSaaSが広がっていく状態になっているが、日本はそうではないので、生産性という点でも差に表れていると感じている。日本全体でITリテラシーを高めていかなければならない。そのためにはイベントなどでの情報提供も行っていくのが大事」
SaaSのプラットフォーム「BOXIL」
SaaSの動きを踏まえて、スマートキャンプはどんな事業を展開しているのか
「SaaSの比較サイトBOXIL(ボクシル)をメイン事業としている。いろいろなSaaSが掲載されていて口コミがついていたり、価格情報があったりと、SaaSの情報サイトになっている。そこにユーザーが来てくれて、どんなSaaSがあるのかを調べたり、簡単にSaaSの比較ができたり、資料請求をして実際にSaaSの導入を検討できたりというようなプラットフォームにしている。また、6月11、12日の2日間でオンライン展示会『BOXIL EXPO(ボクシルエキスポ)』を開催する予定だ。ユーザーがSaaSの情報によりアクセスしやすい環境を作っていきたい」
今後、目指すところは?
「われわれは『Small Company, Big Business』、組織の規模と事業の規模は比例しない、すなわち生産性が重要で、企業の生産性を高めていくというビジョンを掲げていて、そのために『テクノロジーで社会の非効率を無くす』というミッションでビジネスをしている。テクノロジー、ITを普及させ、結果として日本全体の生産性を高めていきたい」
人口減の日本経済にとって生産性の向上は喫緊の課題。SaaSはその切り札となり得ます。【SaaS~変革のプレイヤー群像】では、勃興期にあるSaaS業界のスタートアップ企業を追い、日本経済の変革の可能性を探ります。