カーブアウトをする際の「元いた会社を辞めなければならない」問題について、北瀬氏は「安定しているところを捨ててチャレンジすることについて、本人は納得しているかもしれませんが、家族にとっては怖いですよね」と率直な感想。そのためのモデル作りを研究しているとのことですが、現状は確実な安定性よりもリスクを念頭においてのチャレンジであることは間違いがないようです。
とはいえ、企業からカーブアウトして良かった点も多数。鳥巣氏は「ゼロからのスタートアップだと法務や税務が少々ゆるいままだったかもしれませんが、大企業に鍛えられていたこともあり、決裁権限を明確に定め意思決定が正しく行われるのが当たり前、などという感覚がつきました」と、大企業の経験があったからこその利点を強調しました。
対して北瀬氏からは、「歴史ある企業では守るためのルールができがちですが、それがないことで攻めに打って出やすい、チャレンジしやすいですよね」と、独立したからこその利点も主張。また、小島氏からも「大企業では意思決定プロセスに時間がかかりますが、カーブアウトは事業を切り出しているだけに新しいサービスをスピーディに提供できる利点がありますね」との意見も出ました。
カーブアウトの際、母体企業をどう説得するかという話題について、北瀬氏は「NECでは難しいからこそのカーブアウトだ」と判断してもらったと、粘り勝ちだったことを告白。もちろんそれだけでなく、社内で支持する声を集めたり、NECにとっても関係者にとっても価値ある道を作るから信じてほしいと熱心に働きかけも行ったそうです。
かなりの労力だったことが想像されますが、斎藤氏も「起業家も100人ぐらい回るじゃないですか。それと同じことを大企業の中でもやれば絶対うまくいく。やってできないことはありません」と、粘ることの重要性を強調しました。
鳥巣氏からは、説得する際に最後に重要になるのが外部の投資家の声だという指摘も。「自分たちの事業方針や事業計画を、外部の目でこれだけ可能性があると言っていただけることが後押しになります」と、自分たちもそこを重視したと話しました。
この他、「独立系ベンチャーと比べるとカーブアウトは信用を得やすい状態でスピード感も得られることが強み」(斎藤氏)、「大企業にはノウハウや技術、知見が多数あり、ゼロからではできないものがカーブアウトならできる」(鳥巣氏)などの意見もあり、参加者全員がカーブアウトを前向きに捉えていることがわかるセミナーとなりました。メリットの多さから、今後もカーブアウトが増えていくことが期待できます。
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