SaaS~変革のプレイヤー群像

オンラインイベントの強い味方 “人と人”をつなげるイベントプラットフォーム

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 16年ぶりの日本で気づいた不便さが起業の契機に

――山本さんは米国のブラウン大学を卒業された後、マッキンゼー・アンド・カンパニー サンフランシスコ支社に入社。認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)への出向を経て、 EventHubを設立していますが、なぜイベントプラットフォームを開発しようと思ったのでしょうか。きっかけとなるエピソードがあれば教えてください

山本代表:

 起業したいという思いは、もともと強くはありませんでした。私が社会人になったのは2011年です。マッキンゼーの支社のあった当時のサンフランシスコは、スタートアップの企業文化が盛り上がりつつありました。今の東京と同じですね。当時の同期もマッキンゼー卒業後、スタートアップ企業に転職をしたり、起業したりしました。起業をリスクとして捉えない空気が、当時のサンフランシスコにはありました。

 9歳の頃から16年ほどアメリカに住んでいましたので、日本語は少々苦手な状態でした。いちアメリカ人としてキャリアを歩む中で、アメリカを出て海外で職務経験を積みたいという想いが募り、マッキンゼーから日本のNPOへの出向を希望し、東京に滞在していたという経緯があります。その後、東京に残りたいと思い結局マッキンゼーに戻るのを辞め、東京に残りました。焦って不慣れな土地で就職活動をするよりも、まずは業務委託ベースでいろんな企業に関わってみようと思いフリーランスになりました。その中で、自然と自分にあうカルチャーの会社を求めた結果、東京のスタートアップ界隈に行き着き、その後共同創業者との出会いを経て、起業という道を選びました。

 共同創業者と事業の内容をブレストする中、当時の自分はサンフランシスコで使っていて便利なツールやソフトウェアで、かつまだ日本に存在しないものを主軸に考えていました。

 アメリカでは、よくイベントアプリを使っていました。スマートフォンでかんたんに決済やアンケートの回答ができるアプリです。しかし日本の展示会では、紙のアンケートが配られていたんです。当時はまだイベントマーケティングの効率化というような発想もなく、紙媒体で集めたアンケートのデータ化にも時間がかかっていました。イベントの参加者情報を集計し、解析ができた頃には、すでにそのイベントの話題は参加者の中で冷めてしまっています。

 NPOに在籍していた当時、そのNPOがある「転職フェア」に出展したのですが、求職者の方に6枚つづりのカーボン紙を渡していました。その書類に手書きで必要事項を記入していただくのですが、これにはカルチャーショックを受けました。メールアドレスも手書きでの記入ですから、なかなか読めない。記入された内容は外注して手入力でデータ化をする必要もありました。アメリカでは、イベントアプリで参加者情報をスキャンすることもできたのに、日本ではカーボン紙。今となってはイベントDXは当たり前かもしれませんが、当時はその違いにびっくりしたのを覚えています。

 またそれだけに、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ビジネス・オポチュニティー(機会)の余地が残っていると感じました。

 そうして、2016 年に EventHubを設立しました。安直な考えですが、イベントDXの課題に対しては、アメリカで使っていたイベントアプリのようなものがソリューションとして適切なのではと思い、最初はスマホのアプリ版をリリースしました。しかし、これは失敗に終わりました。共感してくださった一部のイベントDXに関心高い企業は契約に至ったものの、会場でのアプリダウンロード率がなかなか伸びませんでした。そんな中、アップルストアの規約の一部が変更され、弊社の事業には逆風となり、アプリ版を断念することにしました。

 失敗から学び、アプリ形式ではなく、同じ概念をウェブで応用することにしました。ウェブ版のEventHubをリリースしたのが2018年でした。当時はまだまだシード調達もせず、自己資金だけで事業を運営していましたが、UI/UX(ユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンス)の改善を重視したこと、「交流」体験の改善に注力したことで、次第に多くの企業に導入いただけました。その後も先ほど話したオンライン機能の実装のようにプロダクトの改善を続けています。

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