▼本当にあった残念な事例
今回もほんとうにあった事例を紹介する。
「子会社としては承認していない」
複数の子会社や関連会社をもち、ホールディングス化している大企業にて、新規事業推進の承認がおりた。担当者は子会社所属であったため、実際に進めようと奮闘しているところ、親会社の承認から4ケ月後に子会社の経営会議に招聘される。その会議に参加すると、子会社としてはその事業推進を承認していないため、再度決裁をするから、次週プレゼンしてほしいというものだった…。
このように「新規事業」の進め方自体がおぼつかない企業も多くあり、新規事業であるからこそ下手をすると既存事業よりも承認をえる回数が増えるという事象に陥る。
「資本金1000万円以下はNG」
こんな話もある。
共創パートナーと出会い、いざ共に事業検証を進めることになった。経営会議でも承認をされた。その後、自社内の監査・会計部門から「待った」が入る。共創パートナーの資本金が1,000万円以下であるため、取引基準に達しないため、共創はNGという連絡だった…。
担当者は、イレギュラーであるが承認してほしい旨、稟議書を作成し各部門に承認をとりにいき、実際に共創をスタートできたのはそこから半年後だった。
体制・仕組みの構築の重要性
もちろん、冒してよい危険とそうではない危険がある。既存事業に大きく影響があるマイナス要因は避けるべきだ。
例えば鉄道会社が、しかるべき基準において十分に安全である実証が済んでいない自動運転技術を導入し、走行する有人車両で試すのは「冒してはいけない危険」である。おいしい冷凍食品を展開しているメーカーが、「まずいけれど栄養価は非常に高い」冷凍食品をそのまま展開することは既存事業の棄損につながる可能性がある。これも「冒してはいけない危険」である。
だからこそ、これらを事前に項目別に整理し、基準を設計しておくことがとても大切なのだ。
「ここまでの内容なら担当者に任せる」という裁量を渡しておくこと、「GOを出す人は誰なのか」を共通認識にしておくこと。これはアリでこれはナシ。一言に言ってもそのジャッジの観点は多岐にわたるわけであるから、実際に骨の折れる作業だが、ここを事前に整理しておくことは、オープンイノベーション推進・新規事業推進において大きな意味を持つ。
- 決裁ルートを確保しておくこと。誰が決裁者なのかの明確化と、担当者への裁量の分配。
- 判断基準の明確化、何がGOで何がNO GOなのかを皆で共通認識を持っておくこと。
第三者を入れて設計することにも意味があるし、明文化しておくことも必要だ。初回は伴走者・フォローアップをしてくれるパートナーと進めることが望ましい。「暫定」で設計した上で、リーンに試しながら実態との乖離を埋めていく作業は、社内だけで実践しようとすると精度を保つことが非常に難しいからだ。
逆に習得してしまえば自立自走できる。ここまでが非常に大切なポイントであるとお伝えしたい。(解説:eiicon company 代表/founder 中村亜由子)
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【オープンイノベーションの手引き】は、「オープンイノベーション」のノウハウを解説する連載コラムです。業界をリードするeiicon company代表の中村亜由子氏がわかりやすくアドバイスします。アーカイブはこちら