生理やPMSにまつわる悩みは、フェムテックが解決する
両社の女性に関連する分野での課題感や取り組みが共有された後、議論は「職場における女性の健康問題」に展開していきます。
石塚さん「これまで女性が抱える生理やPMSの話は、あまりオープンにされることが多くありませんでした。特に年配の男性は、話しづらそうにする姿も目にしますし、PMSを知らない男性は80%を越えるという調査結果もあります。とはいえ、その調査でもPMSを理解することに対して前向きな男性は多いですし、最近では健康経営の文脈から女性の健康問題に目を向ける方々も増えてきているように感じます」
石塚さんの話を受けて、菅沼さんも女性の多い職場環境における自身の経験を共有しました。
菅沼さん「三越伊勢丹は従業員の70%が女性の職場。女性の健康問題は決して他人事ではありません。過去には、職場で生理が重く調子の悪い方がいた時にどう対応すればよいか分からず、困った経験もありました。前提となる知識や情報を持つだけでも、大きな意味があると思います」
他方で、女性側が「伝えづらい」という感覚を持つ場合もあると石塚さんは補足します。その距離感を変えていく上で、テクノロジーが必要になるのではないかと言及しました。
石塚さん「男性に対し、生理やPMSのつらさを伝えづらい場面はまだまだ存在すると感じています。それに対して、例えばテクノロジーでパフォーマンスを定量化し、数値から間接的に生理などの健康状態を伝えることもできるでしょう。また、PMSでストレスを抱える女性は多い。そこで、チャットボットに感情を吐露することで、AIがユーザーを肯定し安心させることができるかもしれません。フェムテックがコミュニケーションの媒介になる可能性もあるのではないでしょうか」
顧客ロイヤリティ向上の鍵は「テック」と「リアルの場」
イベントの後半では、女性の健康問題や悩みをサポートすることで、顧客ロイヤルティの向上にどうつながるのか。フェムテックとリアルの場の活用を巡って話が広がりました。
石塚さん「例えば、フェムテックのアプリ内で三越伊勢丹と提携することもできるかもしれません。女性はホルモンバランスが崩れると甘いものが食べたくなるなどの特徴があるので、チャットボットを通して適切な食品や商品などをレコメンドしてあげられると良いのではないでしょうか」
菅沼さんは、リアルな場を活用した取り組みとして、2021年7月28日から始まったフェムテックイベント「センシュアル・ライフ2」を紹介しました。
菅沼さん「センシュアル・ライフ2では、フェミニンケアを中心としたフェムテック関連アイテムを紹介するとともに、オンラインイベントを開催しています。本イベントは、若い方を含めて女性の関心が非常に高い。やはり、リアルの場だからこそ感じられるコミュニティが安心につながるのではないかと感じています」
リアルでのつながりに関連し、参加者から「百貨店を訪れる顧客から、商品以外のプライベートな悩み相談を受けることはあるか?」と質問が投げかけられました。これに対し菅沼さんは「リアル」と「テクノロジー」それぞれの良い側面を活かす必要性を述べました。
菅沼さん「もちろんです。三越伊勢丹は従業員も顧客も女性が中心。リアルの場で活躍するコンシェルジュが、お客様の悩み相談に寄り添うことは不可欠です。オンラインで解決すべきものと、オフラインでのみ実現できること、双方を活かしお客さまと向き合うことが必要だと考えています」
最後に両者から今後の意気込みについて語られ、イベントは幕を閉じました。
石塚さん「女性が抱える健康問題に対し、企業ひいては社会が理解することが必要です。それを通し、私は女性が働きやすい社会をつくっていきたいと考えています。また、私が取り組む“性別による生きづらさ”は女性のみならず、男性にも存在するもののはず。活動を通して、そうした部分を含めジェンダーギャップを埋めていければと考えています」
菅沼さん「多様性やグローバル化など、世界では様々な変化が起きています。その中で三越伊勢丹は、女性が多く働いている職場という特性がある。それを踏まえ、企業として時代の変化に合わせ、前向きな社会をつくるお手伝いをしていきたいです」
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