ニュースを疑え

「この世に理想郷はない」 外国人労働のあり方、京都古刹の住職に聞く

 「ただ、外国人労働者の受け入れ拡大がもたらすのは、アイデンティティーの問題にとどまらないと思います。これを機に、この国の在り方や国家とは何かということを、各自が考えるべきなのかもしれません」

 --外国人労働者の受け入れ拡大に対しては、なおも賛否が分かれています。仏教の教えに基づけば、どう考えられるでしょうか

 「あくまで仮にですが、もっともらしく『日本は今の経済規模を維持していかねばならない、というとらわれから外れなさい』などと言えば、仏教っぽく聞こえるかもしれません。でも、それは仏教を使った答えであって、仏教の考えではありません」

 「世間は二項対立でものを考えるから、迷いや悩み、悲しみや憎しみが生まれます。それを超えようというのが仏法。世間が望んでいる解決は目先の都合ですので、外国人労働者をもっと受け入れるべきかどうかという問いには『どちらにしても正しくないし、間違ってもいない』と答えるしかないでしょう」

 --では考えを深めるためのヒントはありますか

 世間の物差しを超える

 「浄土真宗の宗祖、親鸞は世間のことを『難度海(なんどかい)』、つまり渡りにくい海と表現しています。寄せては返す波のように、ひとつ問題が解決しても、また次から次へと別の問題が起きてくるというわけです」

 「難度海を渡す大船(だいせん)が仏様のはたらきであり、私たちに方向性を示してくれるものであると、私自身は理解しています。宗教はさまざまで仏教にもいろいろな宗派がありますが、世間の外にある神仏の視点を意識しているのとしていないのとでは、考える内容や質は異なってくるでしょう」

 --社会保障や日本語教育など、これからさまざまな課題を解決していく必要もあります

 「課題があることは承知しています。けれども世間の物差しで世間のことを考えても、根元の答えは出ずに枝葉の部分が細かくなるだけではないでしょうか。それですら私自身の思いであり、目先の都合にすぎないのかもしれませんが」

 【プロフィル】英月(えいげつ) 1971年、京都市生まれ。真宗佛光寺派大行寺(京都市下京区)の第9世住職。銀行員を経て2001年に渡米し、02年に得度した後、10年までサンフランシスコで生活。帰国後の15年、父から住職を継いだ。講演や法話で全国を飛び回り、テレビ出演も多数。近著に『そのお悩み、親鸞さんが解決してくれます-英月流「和讃(わさん)」のススメ』(春秋社)。

 【用語解説】「ニュースを疑え」

 「教科書に書いてあることを信じない」「自分の頭で考える」。2018年のノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授は、受賞決定の記者会見でそう語りました。ニュースは、世の中で起きているさまざまなできごとのひとつの断面にすぎず、うのみにしていいものばかりとはかぎりません。時事問題を的確に知り、事実から「真実」を見極めていくには、どうすればいいでしょうか。「ニュースを疑え」は、各界の論客にニュースを違った角度から斬ってもらい、考えるヒントを提供する企画です。

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