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先端科学から思想宣伝も 浸透進む中国の人材計画

 さきに閉幕した中国・全国人民代表大会(全人代=国会)で、冒頭の政府活動報告からハイテク育成政策「中国製造2025」に言及のないことが注目された。貿易摩擦を抱える米国がこの政策を強く警戒したことへの反応だが、実はこのほかにも対外的に目立つことを避けて進む国家プロジェクトがある。「海外高度人材招致計画」(通称「千人計画」)など、ハイテク育成を支える海外からの高度専門人材の獲得計画だ。

 いずれも高い報酬や地位と引き換えに最高レベルの頭脳と技術を中国に集めることを目指す。徴募の領域も次世代情報技術、宇宙・航空など文字通りの先端科学分野から、国内外での宣伝にかかわる新聞(メディア)学や、イデオロギー形成に必要な哲学にまで広がった。今回はこの人材獲得計画を検証したい。

 まずは中国の産業ハイテク化を支えた研究開発(R&D)への支出推移をみよう。改革開放路線への転換後、専門家の間では「中国のネックは研究開発意欲の低さだ」と長く言われてきた。

 1980年代から2000年ごろまで研究開発支出は低い水準で推移してきたが、グラフのように胡錦濤政権下の00年代半ばに伸び始めた。リーマン・ショックを受けて当時のレートで約57兆円の財政出動に踏み切った08年からは、毎年1千億元刻みで大台を書き換える急速な伸びに転じた。

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