<2>「分割して」働く
2つ目のシステムは「TAF (le temps alterne fractionne)」です。私が出産した時にはなかったのですが、毎月7日間もしくは10日間を無給休暇にするというものです。
この制度により、通常はひと月に3本組まれていた「日本-フランス」の往復フライトスケジュールが月2本になり、月の仕事はそれで完了します。日本-フランス間でいうと、1回のフライトスケジュールは4日間(日本滞在2泊+フランスにリターン)なので、毎月の実労働が8日(4日×2本)で済みます。
これなら子供が小さくても、留守中、パートナーもなんとか家のことをカバーできそうですよね。フランスでは通常、働くママの代わりにヌヌと呼ばれるベビーシッターを雇います。(日本と同じで託児所は“狭き門”。)雇用主はシッターと一定期間契約し、シッターに毎月の給料を支払います。CAママのほとんどは、毎月一定額の金額をシッターに払うように契約をしています。乗務のない月でもシッターへの給料支払いの必要があるため、収入がないと赤字になるのです。その点でも、毎月一定額の収入があるTAFというシステムはCAママには好都合なのです。
また、1~2カ月完全にお休みした直後の乗務はとても緊張もするものです。個人的には、毎回、ひと月ぶりのフライトを控えた前夜は、変な緊張感からかあまり眠れなかったり、スーツケースの準備も通常より時間がかかったりしていました。
ところで、妊婦のCAって乗務できるの?
みなさん、お腹の大きいCAのいる便にご搭乗されたことはありますか? これまで出産後のお話をしてきましたが、妊娠中のCAについても少し触れたいと思います。数年前、日系の航空会社に勤務していた妊娠中のCAをめぐる「マタニティハラスメント」訴訟が話題になりました。妊娠判明後に地上勤務を申請したものの、地上職に空きがなかったことから、無給休職を強いられたのです。
会社によりますが、私が勤めるフランスの会社では、会社側に妊娠の事実を伝えると、すぐにフライトスケジュールすべてがキャンセルになります。そこで、地上で働くか、休職するか選択肢が与えられます。私の場合、1人目の妊娠中は人事セクションに勤務、2人目は休職を選択しました。アメリカの会社は比較的柔軟で、妊娠を報告後も乗務継続ができるようです。会社により「妊娠〇週目まで」と決まっています。以前勤めていたアメリカの会社では、たしかに妊婦のCAと働いたことがありました。少しお腹が目立ってきたかなという大きさでした。さすがに、お腹が大きくなる妊娠後期のCAはどの航空会社でも存在しません。
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今回は、CAという仕事が結婚・出産後も継続可能であり、実際に育児とフライトとのバランスをとりながら働いているCAママが存在することをシェアしたくて書いてみました。
年齢を重ねてはいても、子育てしながら働くことにより、お子様連れのお客様に寄り添い、きめ細やかなサービスができると自負しております。赤ちゃん連れのお客様が抱く子連れ旅行の不安、そうした方々が求めるサービスなどは経験して初めてわかります。独身時代の仕事ぶりを振り返ると、いかにお客様の気持ち、希望に沿ったサービスができていなかったか…反省しかありません。妊娠、出産、育児の経験は、仕事にもプラスになります。そう思うと、年を重ねてもなおCAを継続することも悪くないと思います。また会社にも大きなメリットがあります。みなさまが思い描く若いCAではありませんが、「おばちゃんCA」も悪くないかも?!(笑)と思っていただけたら幸いです。
【CAのここだけの話♪】はエアソルに登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。>アーカイブはこちら