本書が提唱する「適切なスーツスタイル」について、読者は意外に知らないことだろう。たとえば、スーツやジャケットからワイシャツはどれだけ長く出るべきか、あなたは答えられるか? 正解は1.5センチだ。このような正しいシャツ、ジャケット、ズボン、タイ、靴、小物などのルールがいちいち参考になる。たとえば、素材に関してはシャツと靴下はコットン、スーツはウール、タイはシルク、チーフはリネン、革製品は牛革というのが、ルールだ。「センスの上にルールが存在するのではない。ルールの上に、センスが存在するのだ」というのが本書の主張だ。
前述したとおり、本書は別に高いブランド物を推奨しているわけではない。輸入するためのコストや、ブランディングのための過度な広告宣伝を投じるなど、海外ブランドにありがちな問題について疑問を呈している。ファストファッションまでいかなくても、現在は紳士服チェーンが良質で納得感のある価格帯のスーツ、ジャケットを推奨している。いまやこれらのものは、上下で3~4万円程度で買うことができる。世界でビジネスをしている著者も、この価格帯の服を着ている。日本でも、海外でもだ。
靴にはお金をかける
一方、目からウロコだったのが、著者は靴にはお金をかけているということだ。靴は3万円以上ものを推奨していることだ。よく「オシャレは足元から」というが、これは単に「センス」の話ではなく、「ルール」の関係からだ。グッドイヤー製法の靴は、だいたい1足3万円以上でなければ手に入らないからである。
また、私が新入社員だった約20年前は「営業の新人は白シャツを着ろ」と上司や先輩から説教されたものだが、白シャツは紺色の上着とのコントラストがきつくなりすぎると本書は指摘している。むしろサックスブルーのシャツを着るべきだという。
「ポケットにモノを入れること」「結婚指輪と腕時計以外のアクセサリーを用いること」「景品のペンを用いること」「耳毛を伸ばすこと」「スマホの画面が割れていること」などのオシャレNG集もいちいち参考になる。いつの間にか、あなたもルールを破っていないだろうか? 私も本書を読んで猛反省した次第だ。
自己主張したい気持ち、オシャレしたい気持ちもわかるし、逆に無頓着でいたい、とことん安いもの(逆に高いもの)を買いたいという気持ちもわかる。ただ、まずはルールが大事なのだ。
なお、私がブレずに主張しているのは、「着たい服よりも期待服」である。周りが期待するかどうかということを考えて行動するべきなのだ。クールビズシーズンに突入しているが、クールクズにならないためにも、今一度、服装のルールを確認しておきたい。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら