EUからのプレッシャーをイタリア政府は無視
バラマキ政策による財政の悪化に歯止めをかけようと、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、イタリア政府に対して「過剰財政赤字手続き(EDP)」と呼ばれる制裁手続き(事態の改善勧告・警告に従わない場合、制裁金が没収される手続き)の発動をチラつかせ、軌道修正を求めてきた。
しかしイタリア政府は、こうした欧州委員会の要請に応じなかった。そこで欧州委員会は6月5日、EDPの手続きを始めるとイタリア政府に勧告した。これを受けてイタリア政府は10日、コンテ首相とM5S党首であるディマイオ副首相、レーガの党首であるサルビーニ副首相兼内相が会見を開き、EDPを回避するための対策に臨むと発表した。
EUと対決すれば、有権者へのアピールになる
もっともEDPを回避するため、イタリア政府がバラマキ政策を修正するか、定かではない。コンテ首相自身と腹心のトリア経済財務相はEUとの協調を比較的重視しているが、一方で連立を組む2党、特にM5SはEUに対して強い敵愾心を持っている。EUからの圧力に屈すれば有権者への背信行為にもなるわけだ。
そうであるなら、EDPを受け入れて制裁金を払う方が、いっそ有権者に対するアピールにもなる。結果はどうあれ、EUによる理不尽と対決する姿を見せることができるためだ。5月の欧州議会選で第一党の座をレーガに奪われたM5Sにとって、自らがリードしてきたバラマキ政策の修正は簡単には受け入れられない。
その一方で、国取りを目指すレーガは鼻息が荒い。そもそもM5Sとレーガは、ともに反EUという点ではスタンスが一致していたが、党が目指す方向性としては相いれない関係である。先の欧州議会選で第一党となり躍進が続くレーガにとって、このタイミングはM5Sを政権から追い出す大きなチャンスとなっている。