日本の議論

「シニアの特性活用を」「競争力にダメージも」70歳まで雇用継続、課題は

 --労働現場でのシニアの活用は待ったなしだ

 「希望者全員を65歳まで雇用するという現行の法律に対しては、ほとんどの企業が雇用を確保する点ではすでに対応している。問題は雇用の質だ。企業はシニアを戦力化するための活用・処遇などの人事管理について、シニアは働き方やキャリアの作り方について試行錯誤している。もうしばらく、様子をみてから70歳までの雇用継続の政策を検討すべきではないのか。雇用の質を考えずに雇用の確保を無理に進めることは、企業にとってもシニアにとっても望ましいことではない。企業は競争力を落とし、シニアは働きがいをもてないことになろう」

 --シニア自身の課題は

 「職業生活が長くなると、管理職などの責任ある仕事から第一線の担当者に“降りる”キャリアが普通になる。そのときにシニア自身も職場の戦力として生き生き働くために自らを変える必要がある。これは働く価値観を変えることになるので時間がかかる。この点からももう少し時間がほしい」(平沢裕子)

 いまの・こういちろう 昭和21年、東京都生まれ。平成4年から29年まで学習院大学経済学部教授。29年からは学習院さくらアカデミー長に就任。著書に「高齢社員の人事管理」など。

 もっと労使双方の声を

 昨年暮れに60歳定年となり会社を辞めた他社の女性記者が先日、「やっと再就職が決まったの」と教えてくれた。記者とは全く違う職種で、給料は新聞社に再雇用されて働くのと同じぐらいという。「再雇用で提示された仕事に全く魅力を感じなかった。今の会社では娘のような年齢の子たちに仕事を教えてもらっているけど、この年でも新しいことを覚えるのは楽しいわね」とうれしそうだった。

 いま、企業に65歳までの継続雇用が義務付けられているとはいえ、シニアをうまく活用している企業はどれだけあるだろうか。この状況で70歳までの雇用義務化を急ぐのは、年金支給開始年齢のさらなる引き上げが裏にあるのかと勘ぐってしまう。

 70歳までの雇用義務化は、もう少し企業現場の実態を把握し、労使双方の声を聞くなどしてからでも遅くはないと思うのだが、どうだろう。(平沢裕子)

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