企業が被害に遭っている「上司なりすまし音声」
7月8日、英公共放送BBCが、ディープフェイクを使ったある犯罪が起きていると報じている。冒頭でディープフェイクにはいくつか種類があると書いたが、ここで言う「犯罪」は、映像ではなく、音声をAIで作り出すものだという。要は、ディープフェイク音声である。
どういう犯罪かというと、YouTubeやTedトーク、講演会などで得られる企業のCEOの声を拾って、数多くの単語などをバラバラに集めてAIに学習させ、本物のCEOの声のようなディープフェイク音声を作り出す。そして、部下の幹部などに電話をして、緊急で送金をするよう要求する。つまり、ネット上などですでに公開されている上司の声をAIで再現して、その声音で部下に命令を下す、という手口である。
最初にこの犯罪行為を報告したのは、米セキュリティ企業シマンテックだった。現時点では企業名は伏せられているが、BBCもシマンテックの報告をもとにディープフェイク犯罪を報じた。しかも、すでに3社の企業が被害に遭っているという。
こうした犯罪はおそらく、そう遠くない未来に日本にも入ってくるはずだ。個人や有名人だけでなく、一般企業も、今のうちからこうしたディープフェイクをめぐる国外の動きは把握しておいたほうがよさそうだ。被害が出てからでは遅いのだから。