働き方

もう遅れはとれない…日本生命は“男性育休100%”をどう達成したか

 セミナー、自社イクボス、制度づくりから風土浸透へ

 日本生命では、育児や介護との両立や、キャリアアップを図るサポート体制はすでに整いつつある。

 「ニッセイアフタースクール」を17年4月から新設。子育てとの両立から資格取得まで幅広く100以上の講座を提供している。主に水曜日のノー残業デーに、公私の充実にもっと費やしてほしいと実施。学びの機会を広げるため、PCやスマホ、DVDでも受講できる。その半面、全国に支社がある会社だからこそ、そうした制度活用はもちろんのこと、働き方改革やダイバーシティへの理解促進・浸透の難しさも抱える。

 「タイムラグはどうしても出てしまいます。だからこそ、支社のトップや管理職が『ワークスタイル変革宣言』という個人の働き方改革を書いて張り出したり、人材を育成する『ニッセイ版イクボス』育成のセミナーを全国で開くなど、各職場や地域で取り組みを行っています」と長年改革を担うダイバーシティ推進部部長の浜口知実さん。ニッセイ版イクボスが推進するのは、次世代育成の“育次”、闊達(かったつ)な風土・組織づくりの“育地”、部下のワークライフマネジメント支援の“育児”、そして自分も成長する“育自”の4つのイクジだ。現場での環境・風土づくりのために全社で浸透を図っている。

 「これだけラインアップがあっても、働き方改革の課題はあります。『限られた時間の中で最大の成果を出す』ことを改めて全体が意識していく必要があります。また、効率的なマネジメントと人材育成の両立は管理職共通の悩みなので、今後もマネジメント講座などインプットを増やしたいですね」

 会社が変わり続けるには、社長のコミットメントが必要

 18年4月に就任したばかりの清水社長は、日頃から現場の声を聞きたいと社内で話を聞く機会を多く取るようにしている。あるとき、20代の女性職員に、こう言われた。

 「会社が変わり続けるには、社長のコミットメントが必要です。あなたが手を緩めると絶対に無理ですから、意識して言い続けてください」

 責任に改めて背筋が伸びたという。

 「私も役員時代に女性管理職のメンターを3年間、全部で9人を担当しましたが、女性だけでなく男性や管理職含め周囲の意識改革の必要性も強く感じました。女性9割の会社で女性管理職が16%は、まだまだ少ない。女性活躍、ダイバーシティという言葉がなくなるほどに浸透するまでやり続けます」

 国内でも、未来を見据える企業のダイバーシティ推進や働き方改革は、整備ではなく成果を出す段階にきている。大企業のさらなる10年の“成果”が国内の働き方改革を牽引(けんいん)していくと期待したい。

 (ライター 岩辺 みどり 撮影=工藤朋子、的野弘路、山口典利、水野浩志)

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング