ポチョムキン村の情報はネットで探し、どの情報が正しそうか真偽を確認していく。その次に各国の大使館や軍事組織に自分のプロジェクトを説明していく。言うまでもなく、ガセネタや先方の機密上の理由で“敗退”することも少なくない。
このように十分な資料収集と交渉を延々と重ね、撮影許可がおりるまでのエネルギーと時間が彼の仕事の多くを占める。ストレスといえば、これほどストレスフルなこともないだろう。
彼は取材を、この段階ではジャーナリスティックな活動とは捉えていない。あくまでもアーティストである。だから彼自身がペンをとって書くことはない。ただ、写真集として出版された後、各メディアやジャーナリストがグレゴールにアプローチしてきたステップで、彼自身が協力することはある。
グレゴールの追い続けているテーマは「人工的な空間のなかに人のいない風景」である。
ポチョムキン村の前は、大規模な油田施設や工場が対象であった。あるいは氷点下50度の早朝の街にも人の姿は見えない。かつて第二次世界大戦で活躍したドイツの戦闘機・メッサーシュミットの製造工場に入ったこともある。ドイツ敗戦後、米国やフランスにこのような施設は破壊されたが、ひっそりと隠れた場所に一部が残っているものがある。
「人の表情を撮って逃げるのが好きではない」
人物を撮影すれば、いずれにしてもストーリーが作りやすい。彼はそれを避ける。