「好き」を仕事にする強さ 40年休載なしの「こち亀」作者が語る働き方
社会人経験が大きかった
この「仕事術」の骨格は、漫画家になる前に経験した約2年のアニメーター時代にあった。
高校卒業後、竜の子プロダクション(現タツノコプロ)に入社。脚本、原画、アフレコ、編集…など多くの作業工程からなるアニメ制作現場で得たものは大きかった。「この社会人経験があったからこそ、作業が遅れることがどれだけ大変なことかを身をもって学びました」と振り返る。
読者アンケートで人気がなければ、即打ち切り。厳しい競争で知られるジャンプでの連載も、秋本さんのプロ意識を高めていった。
「ジャンプには新しい人たちが次々入ってきます。どんどん新しいネタを仕入れ、作品をステージアップさせないといけないんです」
事実、『こち亀』は作風を融通無碍に変えていったことでも知られる。初期の劇画調から、次第に下町の風景を描いた作品に変化。ポケベルにPHS、ボーカロイドなど連載当時の最新トレンドも積極的に取り入れた。何より、主人公の両さん自身、警察官でありながらすし職人の修業をするなど、「設定」という枠にとらわれなかった。
「こち亀が最初のハードボイルド風ギャグ路線のままだったら、これだけ長く続かなかったでしょう。漫画に限りませんが、変化を恐れないことが大切なのだと思います」
「こち亀ロス」的感覚も
本書には平成28年、『こち亀』の連載を終えたときの心境もつづられている。
「『こち亀は死ぬまで描きます』と言っていた時期もありましたが、連載40年、200巻というのはちょうどいい区切りでした。やめるのはとても難しい決断でしたが、いつでも続きを描ける“ホームグラウンド”であるからこそ、とんでもない終わり方はしたくないと思っていたんです」
連載終了から約3年。最近、ようやく「こち亀ロス」のような感覚を覚えたという。「自分でもよく描いていたな、と客観的に思いますね」。一方で、今後も「機会があれば描いていきたい」という。例えば、同作の中でも特に思い入れがあるという「希望の煙突」(141巻収録)の“続編”を描くアイデアもある。
「僕の中で両さんは絶えず動いているんです。僕は今、Vチューバー(バーチャルユーチューバー)が大好きなんですが、両さんがVチューバーになったら面白いと思いますね」
そう遠くないうち、また両さんと再会することができそうだ。