関西電力の問題「関係断ち切れ」「甘さ捨てよ」…識者に聞く
おおしま・けんいち 昭和42年、福井県生まれ。一橋大大学院経済学研究科修了。立命館大国際関係学部教授を経て、平成29年から現職。専門は環境経済学。著書「原発のコスト エネルギー転換への視点」で第12回大佛次郎論壇賞受賞。
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「独占企業の甘さ捨てよ」 松本祥尚・関西大会計専門職大学院研究科長
--関電は調査委員会の立ち上げや社内処分などを取締役会に報告していなかった
関電は地域独占企業だが、公益事業を担っているという意識が低すぎる。株主に対する重大な背信行為だ。
--金沢国税局の税務調査がなければ問題は闇に葬られていた可能性もある
そのままスルーしていた可能性は高い。関電は、(森山栄治氏と関係があったとされる)「吉田開発」に調査が入った翌月(平成30年2月)に約1億6千万円相当を返還したとしており、まさに「累が及ぶ前に」との判断だろう。結果的に自浄作用は機能せず、関電内部の「原子力ムラ」の統制が、極めて脆弱(ぜいじゃく)だったことを意味している。
--当初の会見(9月27日)で関電は十分に事実関係を明らかにせず批判を招き、追い込まれる形で2度目の会見(10月2日)を開いた
最初に誠実な対応をするのが不祥事が明らかになった際の鉄則だ。問題の調査報告書では、吉田開発への工事内容や発注額などが黒塗りにされており、取引の全容が全く見えてこない。額の算定が適切かどうかを検証するためにも情報開示は不可欠。顧客の電気料金に跳ね返ってくるようなことがあってはならない。
--今後関電に求められるのは
現金やスーツといった金品受領だけで問題を収束させてはいけない。地元企業への工事の発注額を含めて原子力事業の実態が明らかにならなければ、本質に切り込んだとは到底言えない。社内処分はあくまで内向きにすぎず、対外的な責任の取り方としては、経営幹部の総退陣だけにとどまることは許されない。独占企業ゆえの甘えは捨て去るべきだ。
まつもと・よしなお 昭和39年、兵庫県生まれ。神戸大大学院経営学研究科博士前期課程修了。香川大経済学部助手、関西大商学部教授などを経て昨年10月から現職。専門は監査論。コーポレートガバナンス(企業統治)などに詳しい。