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「怠惰」が道を切り開く デザイナーとアーティストの違いにみる創造の源泉

安西洋之
安西洋之

 「デザイナーやアーティストにインタビューしていて、君には悪いけど、アーティストから話を聞く方が圧倒的に面白い!」。イタリア人のビジネスパートナーであるデザイナーと雑談しているとき、ぼくはこう話した。すると、その彼も「そうだ!」と同意する。連載「ミラノの創作系男子たち」のためのインタビューもあるが、それ以外でもクリエイターと話す機会は多い。どうもデザイナーは格好をつけるのだ。

 インスピレーションを得るには「旅に出ろ」「音楽で集中しろ」「自然のなかに入れ」「マインドフルネスだ」とデザイナーはなかなか煩い。「料理はクリエイティブの源」とも。

 もちろんアーティストにも同じようなタイプがいる。だが、まず、こういう発想の湧き方を語って自己陶酔するタイプがデザイナーに多い。

 「いわば、デザイナーは怠惰であることを恥じ、アーティストは怠惰に恥じないのだ」とぼくは言葉を加える。

 パートナーのデザイナーは、「それは重要だ」と声を弾ませる。

 「普段、怠惰であるからこそ、あるテーマは見つけたときに200%くらいのエネルギーを注ぎ込めるのだ。これは『怠惰の研究』という研究対象にもなるはずだ」

 そうか、デザイナーが自覚している問題なのかと、ぼくは納得する。

 しかしながら、世のなかには、クリエイティブであるための指南書がたくさんあり、もう秘訣が溢れかえっている。

 先日もある集まりに行ったら、デザイナーがその秘訣を羅列していたが、そうなると聞いている人は、どうしてもメソッド的な受け取り方をしてしまう。

 それでいいの?

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