働き方

パワハラの指針素案に批判噴出 「該当しない例」が労働者救済阻害と指摘

 企業に初めてパワハラ防止対策が義務付けられる来年6月に向け、厚生労働省が公表したパワハラ指針の素案に批判が噴出している。素案はパワハラに「該当しない」例を列挙しているが、労働者側は「使用者側に言い訳を許し、かえってパワハラを助長しかねない」と猛反発。厚労省は指針の年内策定を目指すが、議論している労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会も紛糾しており、着地点は不透明だ。

 素案は行為のタイプを「精神的な攻撃」「過小な要求」「人間関係からの切り離し」など6つに分類。該当しない行為として「遅刻や服装の乱れを再三注意しても改善されない人を強く注意する」「経営上の理由で、一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせる」などを挙げた。

 これに対し、日本労働弁護団は「使用者が責任を逃れるための弁解カタログだ」と強調。社会的マナーの範囲が不明確で幅広く解釈される危険性があることや、違法な降格人事の際に「経営上の理由」「一時的」といった弁解が使われていると指摘。該当しない例の記述がむしろ労働者の救済を阻害するとしている。

 ほかに問題視されているのが、就職活動中の学生が面接時などに受けるセクハラ、労働法制で保護の対象にならないフリーランスが取引先から受けるパワハラ、性的指向や性自認に関する侮辱への扱いだ。国会が被害の深刻さを取り上げ、パワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法の付帯決議に対策の必要性を明記したため被害者らの間で指針に寄せる期待が膨らんだ。

 しかし素案は、就活生やフリーランスへの対応を「社内方針で示すことが望ましい」、性的指向や性自認について「侮辱的発言をしたり了解を得ずに暴露したりすることはパワハラ」などと記すにとどまった。東京都内では緊急集会が開かれ「相談体制の整備など具体策がない」(フリーランス協会)「『仕事からの排除』『人間関係からの切り離し』といった行為は対象にならないのか」(性的少数者支援のLGBT法連合会)といった声が続出した。

 分科会では、素案に賛成した経営者側が「いたずらに例示を増やさず、パンフレットなどで丁寧に周知していくことが必要」と主張している。

 ハラスメント問題に詳しい新村響子弁護士は「指針は労働者を救うものであるべきだ。経営者側は前向きに議論し、パワハラをなくす指針にしてほしい」としている。

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