多くの企業でコミュニケーション研修を実施してきた戸田久実さんは、近年とくにアンガーマネジメントをテーマとした研修の依頼が増えているという。職場でのムダなイライラや怒りは仕事のパフォーマンスに悪影響。なぜ、どんなときに怒りが生じるのか、「これはないよね」と思うほどのモンスター社員にはどう対応すればいいか、解説してくれました。
怒るのは悪いことではない
仕事をする上で、感情をうまく扱えることは人間関係を良好にするためにはもちろん、仕事のパフォーマンスを上げるにも必須。そう考える企業からのアンガーマネジメントをテーマにした研修依頼やご相談が多くなりました。
アンガーマネジメントは、怒ってはいけないということではなく、ムダな怒りに振り回されることなく、怒りの感情とうまく付き合えることを目指します。
ではどんなときに怒りが生じるのでしょう。そのひとつは、自分の思い通りにならないことがあったとき。「~ある(する)べき」と思っていることや、信じてきた価値観が破られる、その通りになっていないときに怒りが生じます。
モンスター社員にイラっとしないためには
価値観が多様化し、自分とは違う考え方や価値観をもつ人とのやりとりも多くなり、「このくらい当たり前」「こんなことは常識だ」と思っていたことが通用しないことが多くなった、という声が増えています。
違いを受けとめながらやっていかなければとは思うけれど、「これはないよね」と思う人たちもいる。
そういう人にどう対処したらいいのか……という相談を受けることが多くなり、最近では、「モンスター社員」という言葉も耳にするようになりました。
そのような人たちに対してイラっとし、モヤモヤした気持ちになり、仕事にも支障をきたす。そんなふうに必要以上に気持ちを乱されることないよう、どうしたらいいのか、アンガーマネジメントの考え方もいれつつお伝えします。
タイプ1 愚痴ばかり言ってくる同僚
「ちょっと聞いてよ!」と口を開けば愚痴ばかり。
自分のことを理解しない上司が悪い、取引先の言ってくることがおかしい、後輩が仕事をすぐに覚えない、職場の制度がおかしい……と、そんなにも不平不満があるのかと呆(あき)れるほど。
このタイプは自分に非があるとは思っていない人が多いので、「そんなことないんじゃない?」「そんなこと言わないで、仕事に集中しなさいよ」と言っておさまるものではありません。
気をつけたいのが、その愚痴の影響で自分がイライラすること。
「まったく! なんで愚痴ばかり言ってくるのだろう! 仕事に集中できないじゃない!」と今度は自分がイライラして愚痴を言う側になってしまいかねません。
情動伝染という言葉があるように、感情は伝染すると言われています。特に、怒りなどのネガティブな感情は、ポジティブな感情よりも伝染力があります。
愚痴っぽい人のネガティブな感情の伝染を受けないようにする、つまりネガティブ感情ウィルスの感染を防ぐことができるよう、ポジティブな感情でのバリアをつくるのがおすすめです。
怒りの回数を減らす「ハッピーログ」とは
そのためにおすすめしたいアンガーマネジメントの取り組みが「ハッピーログ」をつけること。
ハッピーログとは、日常の良かったこと、嬉(うれ)しかったことを記録すること。
「取引先へのプレゼンがうまくいった」という仕事のことや、「朝、カフェをゆっくり飲むことができた」「髪型がキレイにきまった」などの日常の些細(ささい)なことでも構いません。
継続して取り組むことにより、小さなことにも幸せを感じることができるようになりますし、怒りを感じることが減ったという声もあります。
また、愚痴っぽい相手への対応としては、「そうね、私もそう思う」とうっかり同意してしまうと、「~さんもそう言ってた!」と、同じように愚痴を言っていたと言われてしまうことも……。