キャリア

伝説の「半沢直樹」金融庁検査官モデル 不良債権問題と戦った実直人生

 検査官の行く末を案じる

 金融庁は昨年夏、組織再編を行い、検査局を廃止した。不良債権処理問題がひと段落し、その後、行政処分を連発して「金融処分庁」とも揶揄された体制を見直した。従来の監督局、検査局、総務企画局の3局体制は、監督局、総合政策局、企画市場局という体制に移行した。金融機関の指導を行ってきた監督局が金融機関の財務状況をチェックし、検査機能をも受け持つこととなった。旧大蔵省の接待汚職では金融庁が分離・発足し、監督と検査の機能も双方の癒着を防ぐために厳格に分けられてきた。だが、次第に「平時の金融監督」に主眼が置かれ、分離で情報共有ができない弊害の方が目立つようになった経緯がある。

 ただ森信親前長官が進めた地域金融機関の改革はまだ途上で、奨励してきた地場企業のコンサルタント営業はなかなか進まない。一方で、従来の融資主体のビジネスモデルは崩壊、いかに収益を確保するのか模索が続く。そうした金融機関のパラダイムシフトが起きている中で、検査はどうあるべきなのか。

 金融庁は新たに、金融機関の育成に注力する「金融育成庁」として組織を立て直し、検査では新しい対話型のモニタリングを目指している。目黒氏は最晩年、検査官の行く末を案じ、「くれぐれもよろしく」と部下に言い遺していた。古巣を離れて10年以上が経っても、最期まで後輩たちを思いやる、実直な検査官人生だった。

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