新型肺炎、賃上げ交渉に冷や水 春闘、経営側は感染拡大で業績悪化を懸念
大企業を中心に賃上げ交渉が大詰めを迎えつつある今春闘で、新型コロナウイルスの感染拡大が交渉に影響する懸念が高まっている。中国からの部品供給の途絶に伴う国内生産停止や、各種イベントの中止、訪日外国人観光客の減少などで、2020年3月期の企業業績の悪化が想定されるためだ。賃上げはアベノミクスの下で続いてきた経済の好循環の起点となるが、新型コロナウイルスの感染拡大でその勢いの持続が危ぶまれている。
電機メーカーの労働組合で構成する電機連合の野中孝泰中央執行委員長は2日の記者会見で、新型コロナウイルスの影響もあって、「(賃上げの)水準議論まではいきつけていない」と述べ、大手企業では労使間の主張になおも隔たりが大きい状況を明らかにした。
その上で「“コロナショック”といっても過言でない状況になりつつあり、経営側の姿勢は一気に硬直化している」と指摘、経営側の姿勢の変化に危機感を示した。
中小企業の賃上げはさらに厳しい情勢だ。機械や金属などの中小製造業労組からなるものづくり産業労働組合(JAM)の安河内賢弘会長は2日の会見で、「賃上げの勢いが止まれば、日本は長期的な不況に入ってしまう。継続的な賃金引き上げは労使の責務だ」と、強く賃上げを迫った。
労働組合の中央組織である連合の神津里季生会長は「大企業では、将来の危機を理由に、内部留保を積み上げてきた」と指摘。その上で「今回の新型コロナ拡大という危機にその内部留保を活用すべきだ」と言及しており、労組側は賃上げの継続を強く求めている。
これに対し、経営サイドはここにきて取り巻く経営環境を一段と厳しくみている。日本商工会議所の三村明夫会頭は2日の会見で、「足元の状況や先行きの見通しが不安定になっている。賃金は一度上げると恒久的で、下げることはできないため、今年の交渉では(賃上げは)厳しいものになる」と指摘した。大手企業の集中回答日まで10日を切ったが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、春闘の賃上げ交渉は文字通りの正念場を迎えている。