「イーストベンチャーズが提供しているシェアオフィスが六本木にあるから、ということで見に行ったんです。ちょうどその時にメルカリ創業時の山田進太郎さんとかがイーストベンチャーズの出資先として入ってたんですよね。そのビルは、僕がグリー初期に当時寝袋持って毎日仕事していた隣のビルで、同じ寝袋を持った若者が一心不乱に働いていました。当時の気持ちを思い出しちゃって、“この若者たちを手伝いたい”って思いました。最初はイーストベンチャーズのオフィスに入ってる若い人たちにひたすら声かけるおじさんというところからスタートです。そうして千本ノックをやっているうちに向こうから声かけられる回数も増えてきて、自分でも手伝えるなってことが確信に代わりました。そのうちイーストベンチャーズの出資先に自分も出資したりしました」
なるほど!出資先の人達が集まっているビルで、無償でハンズオン(支援)を開始したら、思いのほかスタートアップに喜ばれ、エンジェル投資を本格化したのですね。
「そういうことです。最初はタスク管理のやり方とかから教えました。面白いのは、サイバードやグリーでは当たり前だった仕組みが、若手の会社は知らないんです。若手だけじゃなくて、スタートアップを経験した事のないシニア層も分からないことが多かったです。様々な相談で知り合った人が、その後転職のタイミングでも相談されるようになり、そういう人を別のスタートアップに紹介したりとかもしました。VCの人たちも昔からつながっている人が多くて、グリー時代から情報交換していたグロービスの高宮慎一さんや今野穣さんなど、今や日本有数のベンチャーキャピタリストにも投資先の相談に乗ってもらえました」
八面六臂の支援ですね!そこまでできるエンジェルは多いのでしょうか?
「実はエンジェル投資をはじめてわかったのですが、実務レベルまで時間を割いて細かく見てくれるエンジェルはさすがになかなかいないんですよね。スキルという以上に、創業社長としてエンジェル投資をやっている人は忙しいから時間をそこまでかけられない。ですから、“一回り上のおっさんが、たまたま使えるじゃん!”ってなったんでしょうね。実は僕自身もそれを求めていて、同時並行でたくさん、日本を代表するグリーのようなスタートアップを作りたい!と考えています」
後続の人の役に立つために
ここからは未来の話を教えてください。三木さんはどんなキャリアを考えていらっしゃいますか?
「エンジェル投資は少なくともまだ最低10年くらいはやりたいと思っています。なぜなら僕が社会の役に立てるのは、スタートアップ支援ぐらいしかないなと思っているからです。長年やっていると年間400~500件ほど相談を受けるようになり、色々なケースの相談を受けているとさらに引き出しが増えるので、そのさらに増えた引き出しを体系化して、各社向けに合わせて提供するということを専業でやっています。一方、自分も成長しないといけない。エンジェル投資はあくまで支援なので、やがて成功したスタートアップ創業者のほうが大きくなっていってしまうものです。ですから、独自のチャレンジとして、東南アジアで飲食店経営をやってみたり、京都で旅館やホテル作りに関わってみたり、アートコレクターになってアートコミュニティーに入ってみるなど、社長は1個に集中しなければいけないけど、僕は世界中の色々な領域に顔を出してみる。そしてそこでできた知識や人脈を活用して、出資している創業者の人たちが成功した後でもつながっていければと思っています。その先はもう少し広く世の中のために役に立ちたいと思いますね」
なぜそう思うのですか?
「ベンチャー投資の合間に世界中を見て回って視野が広がり、起業家だけではなく、多くの後続の日本人、さらには人類に役に立つようなことをしたいと思うからですね。財団を作って、ビジネスにはならないけれども本当に人の役に立つことを支援したいと思っています。財団は教育や芸術、文化などのテーマが多いですが、どのような領域でやるのかは焦らず中長期的に考えていこうと思っています」
最後にSankeiBiz読者の方にメッセージをお願いいたします。
「自分のやりたい事やその時の感情などを常に紙に書き出すことをぜひやってください。上を向き続けて、自分のやりたい事を紙に書き出して具体化しておくことが今の自己実現につながったと思います。世の中の多くの人は自分の目標や感情の具体化が出来てないと思います。書くと結局あいまいにできないから、“書いたけど本当にやりたいことじゃないなとか、これは別に今優先してやるべきことじゃないな”と気が付けます。もう一個メッセージを挙げるならば、“先の世界を見ようとする意識”です。優秀なビジネスマンは今やるべきことだけで終わらず、将来必要となる事など、将来予測ができる人が多いと思います。これからこういう社会になるとか、こういう人がトレンドになるとか。そういうものに自分をどう最適化していくかというのを考えて、逆算でスケジュールを決めて、自分を成長させていますよね。ですから、単純に今勤めている会社で指示された仕事に流されて毎日を終わらせるのではなくて、少なくとも月に1回は自分のやりたいことや感情を振り返る時間を作ることがおすすめです。僕は定期的に会社が終わって家に帰る前にファミレスに立ち寄って、一人でノートに向き合って未来を考えて、考えたことをノートに書き記す時間を作っていました。そうすると必然的にそこに焦点が合うから、何もやっていなかった自分と比べると数年で雲泥の差になると思います。私はこのようなことを地道に積み重ねることでサラリーマンからエンジェル投資家になったのですから、これが最も成功への近道だったと断言できます」
三木さんありがとうございました。
【ビジネスパーソン大航海時代】は小原聖誉さんが多様な働き方が選択できる「大航海時代」に生きるビジネスパーソンを応援する連載コラムです。更新は原則第3水曜日。アーカイブはこちら