そもそも、李さんがなぜ多慶屋を知ったかと聞くと、20年ほど前に李さんの中国人の先輩経営者から紹介されて連れていってもらい知ったそうだ。以来、リピーターになっている。
中国人が最も信用するものの1つが、信頼できる人からの口コミ情報だ。家族や親戚、親友、尊敬する人などからの口コミの口コミで広がっていく。
もう1つのキーワードは安定感。多慶屋は1947年(昭和22)創業で長い歴史があり、建物に新鮮味はないが、いつ来店しても安定したサービスと欲しい商品が買える安定感は中国人には刺さりまくる。
どうやら中国人は、毎日同じ時間に同じことが繰り返される-日本では当たり前だが-毎朝午前9時にオープンしていつ行っても欲しい商品が買える、という安定感=安心を求める傾向が高いように思える。
「昭和好きの購買力」に注目を
李さんのように昭和後半に日本語を勉強した世代の人たちには、日本人教師が話す日本の文化や習慣、教材として見聞きした映像や音楽にノスタルジーを感じている人も少なくない。
瀋陽で飲食店をグループ展開している汪さん(49)は、上野のガード下にあるカセットテープを大量に売っている専門店へ通って、昭和の歌謡曲や演歌のテープを漁る。最近は、近くにある「ハードオフ」のカセットテープコーナーがお気に入りとのこと。
多慶屋にしてもカセットテープ店にしても、新型コロナ禍もあり経営状態は厳しいかもしれない。しかし、李さんや汪さんのような昭和好きの購買力ある中国人を狙い、売り込みを強化して差別化を図ってみたらどうだろうか。
80年代、苦学生だった彼らは今や富裕層と呼ばれる金持ちになり、学生時代に憧れだったものがあれば爆買い(大人買い?)するはずだ。また、中国では市電やバスに乗らないような富裕層だが、マナーが悪い人は少なく、店側も安心してやり取りできるのではないだろうか。(筑前サンミゲル/5時から作家塾(R))