このようにAI開発において、教師データの質は非常に重要です。しかし残念ながら、データの収集、管理に十分なリソースを配分している日本企業は、決して多くはありません。つまり、AIをちゃんと活用するためには、企業そのものがデジタルシフトしていることが前提になります。
もちろん、最初からすべての条件がそろっている企業なんてほとんどありません。AmazonやGoogleのように、設立当初からデータドリブン型の組織であるほうが珍しいでしょう。
では、どうすればいいのか? 一歩一歩、段階的にデジタルシフトを進めていけばいいのです。私はAI導入を検討することは、日本企業がデータドリブン型の組織に生まれ変わるための、いいきっかけになると思っています。
AIは万能ではなく、ビジネス上の問題を解決する手段の1つにすぎません。しかし、AIを導入しようとすれば、必然的にデータの収集、管理の重要性に気付かされます。
まずは今あるデータでAI開発にトライしてみる。すると、これだけのデータでは精度の高いAIが作れないとわかる。そこからどういうデータを集めればいいのか考え、組織の基盤をデジタルシフトに向かって強化していく。
その結果、「うちの会社に必要なのは、AIとは別のデジタルツールだった」とわかっても、それはそれでいいのです。しかし、データを整理してみないと、「本当に何が必要なのか?」「何が足りないのか?」は見えてきません。
AI導入に着手することで得られるメリットは、「AIが何をしてくれるかわかる」だけでなく、デジタルシフトを進めていくうえでの課題に、自分ごととして気付けるところにもあるのです。
【仕事で使えるAIリテラシー】は、AI開発、AI人材の育成・採用を手がけるSIGNATEのデータサイエンティスト・高田朋貴さんが、ビジネスパーソンとしてAIを正しく理解し、活用する方法を解説します。アーカイブはこちら