批判も度を超えれば“アウト” ネットの誹謗中傷に進む対策
批判も度を超えればアウト
ネット上の書き込みをめぐっては、「批判と誹謗中傷の境目の判断が難しい」との声もある。
ネットの誹謗中傷に詳しい藤吉修祟弁護士によると、誹謗中傷に当たる書き込みは、事実無根のこと▽執拗(しつよう)にプライバシーを暴露するもの▽度を超えた批判-の3つに分類される。
藤吉氏は「書くことによって評判が落ちるものや、たとえ事実だったとしても、公益目的でないものも名誉棄損(めいよきそん)に当たる。また、公開されていないことを暴露することはプライバシー侵害に当たる」と指摘。
意見や批判についても、度を越えた批判は「違法に当たる」とし、「たとえば商品を否定する場合は誹謗中傷になる可能性が少ないが、人格や容姿を否定するような中傷はアウトになりやすい」とする。
一方で藤吉弁護士は「自由な意見を述べることができるのがネットの魅力であり、まっとうな批判は大事。開示手続きなどの簡素化はするべきだが、誹謗中傷(という概念)の範囲を広げる必要はない」としている。
匿名で高まる攻撃性
ネット上で誹謗中傷がはびこる最大の理由は、書き込む側の匿名性にある。
総務省の平成27年の調査によると、日本におけるSNSの匿名利用はフェイスブックの15・2%、ツイッターは76・5%、インスタグラムは68・1%。他国に比べて高い水準といえる。
木村さんのケースでは、主にインスタグラムをはじめとしたSNS上での誹謗中傷が激しかったとされる。ヤフーは、掲示板のコメント欄の監視で培った技術を、SNSの運営事業者などに提供すると表明している。
ネット企業でつくる「セーファーインターネット協会」も6月29日、ネット上の書き込みによる中傷被害対策の窓口を設置し、相談受け付けを開始した。被害者などからの相談に応じて内容を確認し、悪質な投稿についてはSNS事業者や掲示板の運営者に削除を依頼するという。