働き方ラボ

驚愕の「妨害営業」や値引き攻勢 これが信頼を失うダメ営業マンの言動だ

常見陽平
常見陽平

 徹底的な値引き営業

 「いいもの、安く」は消費者にとっては嬉しい。新型コロナウイルスショックの中、なんとか売上を維持しよう、いや、何らかの収入を獲得しようという考え、値引きするのはわかる。衣食住のうち、前の2つに過剰にお金をかけ、今回、住にまで個人で可能なMAX額の借金をしてまでお金をかけるようになってしまった私だが、ここ数カ月、あらゆるモノの値段が安くなり、よく消費をしている。今年はファッション関連のバーゲン開始が早かったし、食品に関してはネット通販でのたたき売りなどもあり、良い物を安く仕入れることができた。しかし、それをあまりにも露骨にやられては、「大丈夫なのか」と思ってしまう。「嬉しい」を通り越して、「不安」になってしまう。値引きのありがたみもなくなってしまう。

 ここ数カ月、住宅や自動車という、人生の中でも買う機会がそれほど多くない高額商品を検討していたわけだが、値引きのトークがあまりにワンパターンで、ありがたみがゼロだった。「今、ここでご決断頂ければ、大胆な値引きが可能です!」「私が上司とかけあってきます。これ以上の値引きは難しいと思いますが、なんとかやりますので」と、劇的なトークで値引きと決断を提案される。実際、値引いてくれるのは嬉しいのだが、この有り難いはずの、ドラマチックな値引きをどの会社もやっていて、ありがたみがないのである。「またか…」と思ってしまった。

 やや余談だが、輸入車のディーラーに買い替えの相談に行ったところ、若い営業担当者がまさに劇的な値引きトークをする人だった。残価設定型ローンをすすめられたのだが、そのトークが味わい深かった。「(五輪がまだ延期になる前だったのだが)東京五輪が終わり、日本経済がガタガタになって、破綻が近づいても、残価設定型ローンなら決められた価格での買い取りが可能なのです。下取りよりもお得です」と、劇的すぎるトークだった。東京五輪が延期になり、さらに新型コロナウイルスショックによる経済的打撃もあり、彼の言っていることはある意味、正しかったのだが。

 高速レス×ペコペコ

 住宅を検討する際に、ウェブ経由で資料請求を行った。15年前にマンションを買ったとき同様、古巣リクルートグループのSUUMOを活用した。いまだに同社の手のひらで踊っている自分に、複雑な心境になったのだが。

 しかし、資料請求ボタンを押してからのレスの速さに驚いた。すぐに電話が何本もかかってくるのである。一生懸命さが伝わってきてありがたいのだが、あまりに速く、しかもペコペコされると「業績、大変なのかな…」と不安になってしまう。もちろん、新型コロナウイルスショックで大変な時期ではあるが。一生懸命すぎると焦りを感じさせてしまい、一顧客として不安になってしまうのである。

 あくまで私の周りで起きた例ではある。ただ、新型コロナウイルスショックにより業績が不安であるがゆえに、ビジネス道にもとるような、顧客を不安にさせるような言動が跋扈していないか。自分や周りの人がやっていないか、注意しよう。そして、客として不愉快な思いをしたら、ちゃんと勇気をもってダメ出しすることも大切だ。不幸な顧客を増やさないため、である。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部准教授
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら

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