元受付嬢CEOの視線

企業を悩ませるコロナ時代の受付 「100点満点」の空間って?

橋本真里子
橋本真里子

 もちろん全ての人に「素晴らしい受付だ」と思っていただきたい気持ちはありますし、そう思っていただけるように一生懸命接客をしてきました。しかし現実的に小数名の受付に対し、多数の来客が一気に押し寄せた場合は、来客ひとりひとりに理想的な接客やケアができるわけではありません。時には自分でも納得のいかない接客になってしまう場合もあります。そういう時でも「最低限、不快に思わないような対応を」という意識を持つことで、例えば閑散期と繁忙期とで気持ちや接し方を切り替えたりもできます。

企業として「説明できる」受付を

 受付というのは企業のカラーやイメージを体現する場でもあるとも思っています。だからこそ、企業として「どういうイメージを持ってもらいたいか」「何を大切にしたいか」を決めるべきだと思います。それを決めると、自ずとそれぞれの企業に合った受付の形も見えてくるでしょう。

 例えば、「人が迎える受付を維持したい」と考えれば、受付嬢の感染対策をしっかり実施した上で有人受付を継続すればいいと思います。あるいは、「御来客の感染リスクを最小限に抑える受付をつくりたい」と考えた場合、内線の受付をタブレットなどに変更したり、機器をこまめに消毒するといった予防策を講じればいいと思います。

 前段でも述べましたが、「100人が100人とも100点満点をつける受付」の実現は非常に困難です。ということは、受付の方法に異論を唱える来訪者が出てくるケースもあるのです。そういった場合でも企業として「何を重要視して受付を構築したか」という考えがあると、違和感を覚えた来訪者にも「弊社としてはこのように考えた上で、できる限りの対策を行っております」とお伝えすることができます。こういった対応ができるか否かは企業のイメージを左右することにつながると思います。

正解がないからこそ、「企業の色」を重視する

 緊急事態宣言発令中の企業の考えとして多かったのは「いかに社内に感染者を出さないか」だったように思います。しかし現在、感染の「第2波」が到来しているともいわれています。感染者をゼロに抑えることが難しい状況になった今、「感染者が出たときにどんな対応をとるか」が企業にとって重要視されるようになってきたように感じます。

 受付において、そしてコロナ対策においての「正解」は正直、定義するのが難しいです。しかし考え様によっては、ウィズコロナ時代においても受付という空間は会社の色や考えを打ち出せるポイントでもあると思います。これを機会に、改めて「受付」について見直すのはいかがでしょうか。

橋本真里子(はしもと・まりこ)
橋本真里子(はしもと・まりこ) 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にRECEPTIONIST(旧ディライテッド)を設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら

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