アフターコロナのデジタル戦略

流通系電子マネーは衰退を始めたか データ収集競争は第2幕に

根来龍之
根来龍之

 あまり注目されていないが、ローソンが発行するJCBブランドの共通ポイントPonta(ポンタ)カード「おさいふPonta」のプリペイド機能が8月17日に終了した(ポイントカード機能は残っている)。

 セブン-イレブン・ジャパンは8月11日、自社のスマートフォン向けアプリ「セブン-イレブンアプリ」にソフトバンク系のスマホによるコード決済「PayPay(ペイペイ)」機能を10月以降導入すると発表した。

 現在、セブン-イレブンアプリにはグループ独自のプリペイド型電子マネー「nanaco(ナナコ)」との連携機能があり、nanaco残高・ポイントを確認できる(nanaco支払い自身はアプリではできない)。この連携機能が10月からどうなるかは発表されていない。

 実は、これもあまり注目されなかったが、セブン-イレブンは、3月12日からnanacoへのクレジットカードによるチャージ機能を縮小した。

 それまで広く他社のクレジットカードでチャージできたのが、3月12日からは、セブンの純正クレジットカードでしかチャージできなくなった。これは、nanacoの普及に同社が以前に比べて熱心でなくなった証拠だと思われる。

 この意思決定は、セブン-イレブンアプリがあれば、顧客の個別購買行動を十分収集可能だという判断も背景にあるのだと想像する。もともとは、グループ会社が開発したコード決済「7Pay(セブンペイ)」によるデータ収集強化を計画していたが、それがセキュリティ問題で挫折した。しかし、セブン-イレブンアプリによるデータ収集自身はあきらめなかった。その一環で、PayPay機能の内蔵も計画されていると理解できる。

 ファミリーマートの場合は、もともと、自社電子マネーを持っていなかった。後発故の一足飛びの発展、いわばリープフロッグ型発展で、2019年7月に、コード決済「FamiPay(ファミペイ)」を始めた。これに対し、セブンとローソンは、自社のコード決済アプリをいまだに持っていない。

 モバイル化が成長要因

 以上の状況を考えると、ICカード式のプリペイド型が主流だった流通系の電子マネーは、今後衰退していくのかもしれない。流通系企業は一時熱心だった自社の電子マネーの普及から次の段階に「データ収集戦略」を移行させていると解釈できる。イオン系のプリペイド型電子マネー「WAON(ワオン)」は、まだ消極化の兆しはないが、今後同じ流れの中に移行するのではないか。

 ICカードの発行枚数は累積であり、それ自身がすぐに減ることはないだろうし、実際、発行枚数や決済額自体はまだまだ減っていないようだが、流通企業にとってその重要性は低くなったのではないか。

 ただし、電子マネー自体が衰退を始めたわけではない。JR東日本が発行するプリペイド型の「Suica(スイカ)」などの交通系電子マネーは、今後も成長するだろう。これは、交通系電子マネーは乗車券のデジタル化という基盤機能があるからだ。Suicaは、iPhoneやApple Watchの決済サービス「Apple Pay(アップルペイ)」対応によってモバイル化できていることが成長要因になっている。それに対して、流通系電子マネーはApple Payに対応できなかったことも衰退を始めた理由の1つであろう(Apple側が対応に消極的だったと考えられている)。

 なお、Android端末向けの決済サービス「Google Pay(グーグルペイ)」は、各種電子マネーに対応している。nanacoとWAONも対応できている。

 *NTTドコモが運営する「iD(アイディ)」やJCBが運営する「QUICPay(クイックペイ)」は、Apple Payにも対応しており、決済手段の1つとして一定のシェアを確立している(ただし、これらはクレジットカード会社が主体の後払い型から始まったものであり、流通系や交通系のチャージ型とはビジネスモデルが異なる)。一方、楽天グループのプリペイド型「楽天Edy(ラクテンエディ)」は、同グループの「全決済手段を自前で持つ戦略」の一部として生き残っていくだろう。現時点ではApple Pay非対応(Google Payには対応)なので、Suica やiDより不利な点はあるが、日本で最初に始まった本格的電子マネー(ソニーグループとしてスタート、2009年に楽天が買収)ということもあり、まだまだ競争力はある。楽天は、楽天経済圏にすべてのセグメントの人たちを囲い込むために、コード決済(楽天Pay)、クレジットカード(楽天カード)も持ち、全決済手段を自前で持つ戦略をとっている。なお、楽天は「楽天ペイ」アプリで「Suica」の機能を利用できる提携サービスを5月25日から開始している。

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