高論卓説

死の零細飲食店を救え 「隠れ失業者」急増、雇用環境改善困難に

 新型コロナウイルスの感染が急拡大し、東京はじめ複数の都道府県が飲食店に対して営業時間の短縮を要請した。感染拡大が新年まで継続した場合、飲食店の破綻や廃業が相次ぎ、失業者が急増しかねない。(田巻一彦)

 ところが、日本の雇用・労働法制の枠組みでは、飲食店を解雇された従業員は「隠れ失業者」となり、カウントされない可能性が高い。政府が実態の把握に手間どれば、雇用環境悪化に歯止めがかからなくなる事態も予想される。

 11月下旬になって東京都や大阪府、北海道、愛知県などでエリアを限定した飲食店などへの短縮要請が行われている。東京都を例にとると、11月28日から12月17日までの20日間、酒を提供する飲食店などで午後10時までに営業時間を短縮するよう要請。応じた店舗には合計40万円の協力金が支給される。

 しかし、1日当たり2万円の協力金では、時短で発生する減収分を賄えない店舗が多く存在するとみられる。「書き入れ時」の忘年会シーズンとかぶってしまったことも打撃を深刻化させている。

 そこで、1日当たり2万円の協力金の大幅な引き上げを政府に求めたい。1日当たり5万円、20日間で100万円の給付を決め、2020年度第3次補正予算に差額分の経費に相当する予算を計上すべきだ。

 零細な飲食店の経営破綻が続出しても、失業率が上がらない可能性がある。

 なぜなのか-。

 厚生労働省の説明によると、公共職業安定所(ハローワーク)に登録して求職している人などが失業率算出の基礎になる完全失業者にカウントされる。ハローワークとの接点は通常、直前に雇用されていた企業が雇用保険に入っており、被保険者として給付金を受け取ることなどで生まれる。

 つまり、働いていた飲食店が零細で雇用保険に入っていない場合、失業時に給付金を得られないため、ハローワークとは「縁がない」状況になりやすい。このケースでは、完全失業者ではなく、隠れ失業者になる公算が大きい。

 隠れ失業者になりやすい労働者に関する公的な統計は存在しない。ただ、就業者数から雇用保険の被保険者数を差し引いた人数が、隠れ失業者になりやすい人数に近い規模といえるだろう。就業者は足元で約6600万人、雇用保険の被保険者数は19年度末で約4400万人なので、雇用情勢が悪化した場合、2000万人規模で雇用状態が把握できないケースもあり得る。

 一方、政府の産業センサス(16年)によると、宿泊業・飲食サービス業の従業員は536万人。飲食店などの倒産が続出して5%が失業したと仮定した場合、20万人超の失業者が新たに発生することになる。

 10月の完全失業者が215万人であり、飲食店の倒産激増は、短期間に失業者を10%前後増加させ、そのうちの多くが隠れ失業者になるリスクを秘めているといえる。

 政府・与党の要人からは「これから3週間は正念場」との声が出ているが、最悪の事態回避へ思い切った政策決断ができるのか、正念場に直面しているのは菅義偉首相と政府・与党の幹部の面々だと指摘したい。

【プロフィル】田巻一彦 たまき・かずひこ ロイターシニアエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経て、ロイター副編集長、ニュースエディターなどを歴任。東京都出身。

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