働き方ラボ

あなたに強敵(とも)はいるか? コロナ禍での切磋琢磨のススメ

常見陽平
常見陽平

 この頃は、極めて意識の高い言い方だが「就活生の前で、最高の社会人となり、社会、会社への扉を開けてあげること」を目標としていた。説明会に使う資料や動画、装飾物づくりから、プレゼンテーションのやり方、トークの内容、さらには服装まで他社に負けないように研究し、力を注ぎ、磨きをかけていた。

 資料作りにおいては、学生がネットに書き込みたくなるパワーワードを仕込んでいたし、説明会では音楽のライブや夏フェスや格闘技イベントを参考にし、「煽り映像」から始めたり、最後は社員や顧客の声をまとめたビデオを流すなど「感動」するものを目指していた。就活を応援する歌まで作ったこともある。服装も「総合商社よりも、大手広告代理店よりもかっこいい自分でいる」と美容室に通い若者にウケる髪型を研究し、さらに服にも1着10万円以上かけた。採用のためだけに20万円するブランド物のスーツも購入した。面白い話をするために、自社の提供番組はすべて録画して見た上、ビジネス雑誌なども読み込んだ。もちろん、他社の取り組みも研究した。

 ただ、最後は壁にぶち当たった。気づけば、合同説明会などでプレゼンをするたびに、後ろの方には大手の人事がずらりと偵察にやってくるようになった。つまり、いつの間にか、他社にマークされる存在となったのだ。他社とこれ以上のものを超えるには、自分を超えなくてはならなかった。

 他社の人事を参考にしていても、勝てないということを悟り、私は他の分野から学ぶことにした。前述したように、ロックのライブや夏フェス、格闘技イベントなどだ。また、まるで意識高い系のようだが、「人事」という枠をこえ、「かっこいいビジネスパーソンとはどんな人か」とビジネス雑誌をみて研究した。

 最後は自分との競争だった。ただ、「かっこいい社会人」とは何かということを考え、それを目指し、競うことにいきついた。これは今も変わっていないのだ。

 君たちは誰と競うか

 新型コロナウイルスショックの時代、社内外のライバルの動きが見えにくい。いや、むしろSNS上で他社の動きをウォッチするのが楽になっているとも言えるが。自分を超えるために、自社や自分の業界以外にライバルやロールモデルを求め、自分のために自分を磨こう。特に、「かっこいい社会人」とは何かを考える続けること。別にそれは目の前にいる人でなくてもいい。いま存在する人でなくても、ビジネスパーソンでなくてもいい。競争相手、ロールモデルが、コロナ時代の仕事を楽しくする。

 そういえば先日、社会人1年目の教え子からメッセージが届いた。大手人材ビジネス企業勤務の彼は、このたび営業成績で400人中3位になり表彰されたそうだ。もともとサッカー少年で、高校進学時、強い高校でプレイするために越境入学し、全国大会にも出場したことがある彼は、「勝利」ということに静かに闘志を燃やすタイプである。進路面談をした際も、「勝利」「成長」に対する並ではない熱を感じた。全然、ブレていなくて嬉しかった。

 何かと黙っていても競争「させられる」社会ではある。ただ、自ら楽しく「競争する」ことを意識したい。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部准教授
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら

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