長寿企業大国ニッポンのいま

「事業承継計画表」を後継者が作成することの大きな意義 家族承継の第1ステップ

葛谷篤志
葛谷篤志

事業承継計画表を作成する前にお父様との対話を大切に

 まず、事業承継計画表を埋める前に、会社をしっかり知ることが重要です。事業の概要や経営理念、今後事業をどうしていきたいかなど、数字で語れない部分をしっかりとお父様と話すことで把握するのです。中小企業庁は経営者向けに事業承継計画表の作成方法を紹介していますが、経営者向けであっても経営理念などを確認することを勧めています。

 後継者が事業承継計画表を作成する場合には、特に会社の創業時の思いや苦労話も一緒に聞くことをお勧めします。会社を引き継ぐためのイベントと捉えてお父様に接触してしまうと、誤って引退を促していると捉えられてしまったり、早く譲り受けるような誤解を招きかねません。建設的に、会社の過去の話から将来の会社の話を聞くために双方の対話のきっかけを増やすと良いでしょう。

 次に、会社の株式の保有比率や売上推移・経常利益など具体的な数字で会社を把握していきます。株式の保有状況などは、場合によっては時間をかけて移行していく必要があったり、資金面の準備をしなければならない場合もあります。株式に関しては、実際にお父様がどのようにしていきたいかなどによっても変化していきます。

 筆者が登壇したセミナーでは、「株式を均等にご兄弟に割り振りたい」という経営者がいらっしゃいましたし、「覚悟を持って事業を引き継いで欲しいので、100%譲り渡したい」など現経営者の方針や想いを伺いました。実際にお父様と会話していく中で、「どのようにしていきたいのか」という希望とセットで、現在の株式の保有割合を聞いてみると良いでしょう。

 売上・経常利益などについてはあまり言いたくないという場合も多くあると聞きます。その場合は、無理に聞くのではなく、どこかで教えてくれるのを待つことも大切です。

 前回解説した、「ハード面の承継項目」と「ソフト面の承継項目」に関する内容を織り交ぜて聞くことで、徐々に会社のことがわかってくるケースが大半です。時間をかけて向き合うことで事業承継計画表に記入する情報がわかってきます。

 最後に、事業についてしっかりと把握をしましょう。

 ご自身が事業を引き継ぐと仮定した時に、現段階で見えていない業務や部門などについて列挙します。後継者は全ての業務をきちんと把握する必要があるかと言われれば、そうではありません。

 しかし、経営者になるにあたり「事業の何が把握できていて、何が把握できていないか」を明確にしておくことは重要です。場合によっては、その業務にご自身が信頼のおける人を登用することなどの対策を打つこともできるからです。経営者として「把握していない部分」を知らないことは、事業を推進、発展させていく上で時に致命傷になるのです。

後継者のための事業承継計画表作成の手引き

 お父様の対話などを通じて会社について把握したら、実際に事業承継計画表を作成していきます。手順は以下の通りです。

  • お父様、ご自身の年齢を記入する
  • 売上や経常利益など、会社の業績に関する情報を記入する
  • 持株割合の移行推移を記入する
  • 現段階で把握をしていない業務・事業をどのように運営するのかを後継者教育の項目に記入する

 10年間という長い期間で、お父様の年齢と照らし合わせることで、「まだ60歳だから大丈夫」という意識から「もう60歳だから準備をしなければ」という意識に変化することがあります。また、役職がどのように変化するかなどを想像することで、現段階で在籍する社員のみなさまとどのようにコミュニケーションをとっていくべきか、会社の功労者に対してどのように労っていくのかなど中長期的に社内での立ち回りについて考えるもとになるはずです。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング