働き方

カカオ廃棄果肉から新食品 三井物産、入社2年目社員が奮闘

 三井物産が、チョコレートの原料となるカカオで、廃棄されるのが一般的だった果肉を、新たな食料原料とする取り組みを進めている。SDGs(国連の持続可能な開発目標)に対応する素材の有効利用として商品化が期待される一方、大学を卒業したばかりの入社2年目の若手社員が手掛けるプロジェクトとしても事業の行方が注目されている。

 持続可能性に期待

 新たな商品開発へ悪戦苦闘しているのは、食料本部食品原料部製菓・乳製品室の水野光氏(24)。そもそもは水野氏の前任者がエクアドルのカカオ農場に商談で出張した際、お茶菓子としてカカオの果肉「カカオパルプ」を出され、そのおいしさに驚いたのがプロジェクト立ち上げのきっかけだ。

 チョコレートの原料として使われるのは通常、カカオの種子部分だけ。種子の周りのカカオパルプと呼ばれる果肉は、糖度が高く種子を発酵させるための工程に使われたりするが、その後は捨てられたり、肥料に使われる程度だ。ただ、栄養分があり、カカオ農家では自宅で食べることもある。

 前任者はこれはビジネスチャンスと感じ、エクアドルからの帰国後、商品化を検討。日本の食品・菓子メーカーに「面白い原料があります」と提案していた2019年6月、入社してわずか2カ月目のタイミングだった水野氏が一切の仕事を引き継ぐことになった。

 カカオパルプには「テオブロミン」という成分が含まれ、ダイエット効果があるとされることに加え、サステナブル(持続可能性)への企業の意識が高まっていたこともあり、提案を受けたメーカー各社からは「流通の過程で廃棄されてしまっているカカオパルプが、付加価値を持った食品原料として生まれ変わるというコンセプトに共感してもらえた」(水野氏)という。そして、あるメーカーと共同で商品開発を進める合意にこぎ着けた。

 輸入に思わぬ難題

 だが、商品開発には大きな課題があった。エクアドルと日本では食品の品質管理基準が異なる。カカオパルプを日本に輸入するには、エクアドルでの検査基準だけでなく、日本向けの新たな検査基準をクリアしなくてはならない。そのためには製造や殺菌の工程で、日本基準へ対応するための投資が必要となる。エクアドル側のカカオ会社の工場との交渉は厳しく、2~3カ月に及んだが、この取引は将来、大きく伸ばせるという確信が双方にあったことで、エクアドル側が日本基準を受け入れ、輸入が可能となった。

 現在も商品化へ試行錯誤は続くが、カカオパルプの甘みを生かし、「シュガーフリー」や、甘いものを食べてしまったという間食時の罪の意識を軽減できる「ギルティフリー」といったキーワードなどで開発が進んでいるという。

 ほぼ1人で取り組むプロジェクトと出合い、食品輸入や法規制対応などをクリアする「経験は大きかった」と振り返る水野氏の例は、コロナ禍の厳しい環境下で4月に入社する新入社員の大きな可能性を示すエールともいえそうだ。(平尾孝)

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