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食のエンターテインメント性を加速 スシローのあくなき合理化精神

秋月涼佑
秋月涼佑

■「食べるという行為」の「自由さ」を最大限に追求

 それにしてもこの飲食業にとって苛酷な時代に「スシロー」の業績は堅調、回転寿司業態自体も売り上げを落としていないのには刮目させられます。(スシロー、くら寿司はコロナ禍でも加速 業界2強が都心に出店攻勢)

 あらためて支持される理由を考えると、先述のコロナ時代に強い非接触型オペレーションももちろんありますが、何より回転寿司ならではのエンターテインメント性が、減ってしまった外食機会の中だからこそ際立つのではないかと思います。

 人間にとって本能レベルでうれしいことの切り口は少なからずあるでしょうけれど、自分で何かを選択する楽しさ。これはなかなかどうしてそんなヒエラルキーの上位にあるのではないでしょうか。メニューが少ないレストランは味気ない、一方で悩むほどメニューが多くて本気で文句を言う人はいません。

 異色のヒットドラマ「孤独のグルメ」冒頭の惹句「時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり、自由になる。 誰にも邪魔されず、気を遣わずものを食べるという孤高の行為。 この行為こそが、現代人に平等に与えられた最高のいやし、と言えるのである。」

 まさにそんな「食べるという行為」の「自由さ」を最大限に追求したスタイルが回転寿司ではないでしょうか。

 老若男女、おじいちゃんから幼児までが一つのテーブルでまさに思い思い「自由」にオーダーを楽しむわけですから、お皿が積み上がって当然です。しかも絶妙なのは、スシローで言えば110円、165円、330円(すべて税込み)と基本3種類の考えてみれば大胆なほどに大きな価格差がある一皿一皿を、各自それなりの経済感覚と奮発心、大蔵大臣の顔色などで算段するわけですから単純なエンターテインメントではありません。

 そして最後にみんながこれほど大満足したという段でのお会計に納得感が高いからこそ「また来よう」となるに違いありません。

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