孤立しないための「チーム形成」テクニック
多くの後継者のインタビューをする中でわかったことですが、事業承継後、後継者が社内で孤立しないためのテクニックがあります。
事業承継を行う際に自分が信頼できるビジネスパートナーも一緒に事業に参画する
経営者として主要な取引先周りや業績などと向き合うことで、既存の社員と向き合う時間が取れなくなることが少なくありません。その際に、現場のスタッフの想いや今までの事業の進め方をキャッチアップするために、管理職ではなく、現場スタッフとして信頼のおけるビジネスパートナーにも一緒に働いてもらうということです。
ビジネスパートナーの参画により、既存の社員のみなさまからは、現業を把握しようとする姿勢を感じてもらえたり、社長が変わることでの不安や愚痴を聞くことができ、事業変革のスケジュールなどに反映させることが可能となります。
以下は、実際に事業承継時にビジネスパートナーを現場スタッフとして入れた際の後継者の感想です。
- 既存のスタッフの働きぶりについて適時情報共有を受けていたおかげで、評価がしやすくなった
- 既存事業の中で、有益な事業などを知ることができ、事業変革の戦略に反映させることができた
- 自分自身が既存社員と面談をした時には出なかった愚痴や不安などを拾うことが出来たので、社員のみんなとより率直に向き合うことが出来た
- 社員の働きぶりでの改善点を見つけることができ、事業変革ではなく、まずは既存事業の効率化改善を行うことができ、それが社員のモチベーションアップにつながった
上記のように、後継者の方々からは好転させることが出来た事例を伺うことが出来ています。家族承継において、経営者として一人で参画すると孤立してしまう可能性が増しますが、このように、自分にとって馴染みの深いパートナーに現場職員として参加してもらうことで、双方向で企業の運営実態を把握できます。
今だけでなく過去の取引先も大切に
最後にお伝えしたいのは、過去に取引のあった企業・現在も取引をしている企業を大切にすることです。
後継者として、事業を引き継ぐ中で、金融機関や、過去の取引先周りを行うことは少なくありません。その際に、事業変革に気持ちが先走ってしまったり、新たな取引先開拓を優先してしまったりすることで、今までの取引先を蔑ろにしてしまうケースが少なくありません。
古い企業の場合は、地場・地域に根ざした企業としての取引が行われており、古くからの付き合い、場合によっては、おじいさまの代からの付き合いといった取引先もよくあるでしょう。そうした歴史を重んじることで、取引先や社員のみなさまもきっとあたたかく迎え入れてくれます。
以前インタビューした会計事務所の後継者の方は、ご自身で事業承継時に既存の取引先を招いたセレモニーを主催したとおっしゃっていました。先代を敬い、感謝を伝えると共に、今までの取引先のみなさま・既存の社員のみなさまを招いたイベントです。自己紹介としてプロフィールなどもお伝えし、「若い経営者になっていく覚悟」をお伝えする場を設けることで、ご自身の覚悟も固まったということです。
こうした小さな工夫を重ねることでスムーズな事業承継が実施出来ます。
後継者にとって重要なのは「リスペクト」
ベンチャー型事業承継に代表されるような、「事業承継時に行う事業変革」は後継者にとって事業承継を行うためのモチベーションの一つであると思います。しかし、過去の功労者が築き上げてきたものがあっての事業承継です。まずは、既存の事業を理解し、リスペクトを忘れずに、企業や事業を後継者の色に染めていくことをお勧めいたします。
【長寿企業大国ニッポンのいま】は、「大廃業時代」の到来が危惧される日本において、中小企業がこれまで育ててきた事業や技術を次の世代にスムーズにつなぐための知識やノウハウを、事業承継士の葛谷篤志氏が解説する「事業承継」コラムです。アーカイブはこちら