働き方ラボ

その社交辞令、今すぐ止めよ コロナ禍で蔓延した「謎の言い回し」が持つリスク

常見陽平
常見陽平

 前置き、言い訳をしないのが最大の配慮

 新型コロナウイルスショックにより広がったのがリモートワークであり、オンラインコミュニケーションだ。まだなれないという人も多いことだろう。

 ルール、マナーについてもこの1年間でだいぶこなれてきたものの、まだまだ試行錯誤中だ。ビジネスでメールを使うようになった四半世紀前から私たちはこの模索を続けている。オンラインのコミュニケーションはメール導入時からフラットかつシンプルであるべきだという意見があったが、必ずしもそうなっていない。旧態依然とした企業では、挨拶文が長かったり、やたらとCCにずらりと人が並んでいたりする。メールの返信だけで時間がかかってしまう。

 ただ、ビデオ会議などを日常的に行う時代においては、可能な限りコミュニケーションをシンプルにすることを提唱したい。通信環境が十分とは言えず、遅延などもありえる状況の中、長々と前置きをされるのはいらつくからだ。特に「間違っているかもしれませんが」「準備が不十分だと言われるかもしれませんが」など、前置き、言い訳を長々と語るのは嫌がられる。相手の時間を奪ってしまっていることを理解してほしい。これが通信の遅延とあいまって、とぎれとぎれの音で伝わるとストレスはマックスに達してしまう。

 この前置き、言い訳系の社交辞令は対面でのアポでもやめてしまいたい。私が苦手なのは「つまらないものですが」という社交辞令だ。「つまらないものなら、渡すな」と言いたくなる。飲食店ではスタッフが「北海道の礼文島でとれたウニです。塩水ウニですので、くさみがありません。今回はこれで贅沢に『うにパスタ』をつくりました」というように自信満々でプレゼンする。これがお土産になった瞬間、なぜ自信を失ってしまうのか。むしろ「美味しいものですので」と自信をもって渡してもらった方が好印象だ。いまや対面でのアポが減り、手土産などを渡す機会も減ってしまったが意識したい。

 相手のことを考えると、前置き、言い訳で時間を使うのは失礼きわまりない。ここで言い訳や事前の謝罪をしなくてもすむような事前準備を心がけたい。

 よくわからない言葉には首をかしげる

 徒然なるままに、最近の気になる日本語について書いてきた。言いたい趣旨は、意味不明の社交辞令が相手を不愉快にするということである。この「その日本語、おかしくないか?」「何を言っているのだろう?」と疑う姿勢は大事にしたい。

 ふわふわした言葉、心はおどるものの実際には何を言っているのかよくわからない表現というのは、コロナ前から蔓延っていた。いわゆる「ポエム化」だ。よくあるマンションポエム「天地創造」「叡智の杜」「空と風と大地のハーモニー」という、『キン肉マン』風にいうと「言葉の意味はわからないが、とにかくすごい自信だ」という感じのものがネタになった。しかし、政治家や経営者までがそのような言葉を連呼するようになり、もうわけがわからなくなった。

 コロナ関連でも「勝負の3週間」「ここが瀬戸際」という言葉が連呼され、言葉の重みをまるで感じなくなった。そして、日本は感染拡大が抑えられているとは言われているものの「人類がウイルスに打ち勝った証」とまで言われると、もうわけがわからなくなる。

 要するに言いたいことは何なのか。何が言いたいのか。謎の日本語に、慣れてしまわぬように。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部准教授
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

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