こうした特典を盛り込んでいますが、DEEP VALLEY Agritech Awardの最大の効果は、応募者の皆さんを待ち受ける深谷市の農業関係者の意識改革にもつながっていることだと思います。
よく自治体がとる施策には、集めたい方たち側だけを集めて、出来る限り市の関係者以外を巻き込まないようにしている取り組みがあります。これも、先述したような時限性と合わせてよくある、いわゆる「縦割りの事業」というものだと思います。これまでの日本の地域振興や農業振興では多く散見されました。
DEEP VALLEY Agritech Awardは最初からこの縦割りの部分を排除して実施しました。
市の関係者は全力でこのDEEP VALLEY Agritech Awardの成功を願い、市長や副市長を中心に市の組織を縦断して取り組んでいました。また、農業振興の場合、地域の農業を支えるJA、あるいは生産者の支持や協力もとても大切なものですが、市として趣旨をしっかりと説明し、「アグリテック集積宣言として」、また「アワードの審査員として」、有識者だけではなく、地域の農業を知り尽くしたそれぞれの立場の関係者に協力を仰ぎ実行されています。
これってあたりまえじゃない? という方もいらっしゃるかもしれないですが、この垣根を越えて地域のために同じ想いで取り組むことは、農業界においては「破壊的イノベーション」といっても良いほど大きな変革です。
迎え入れる市側が全員当事者になる事で、より良い形で企業を受け入れられる。そして、受賞企業は喜んで深谷市で事業進出できる。このメカニズムがこのビジネスコンテストの最も優れたところです。
「破壊的イノベーション」をおこない、OneTeamとなった深谷市の関係者のみなさんの審査の視点は
(1)コストの面から深谷の農家が導入可能か?(導入可能性)
(2)深谷の農業現場で役立つのか?(実用性)
(3)導入することで、深谷の農業の稼ぐ力は高まるか?(収益性)
(4)従来の技術やサービスと比較して、独創性や新規性を兼ね備えているか?(独創性)
という上記のポイントを評価するということになっています。私たちのような民間企業や有識者のみなさんは常日頃変革やイノベーションを産業に求め新しい事を想起したり考えることが仕事となっていますが、上記のような取り組みを有識者のみならず本当に市内で農業に関連している様々な立場の方の意見を取り入れ、自分事として評価をしてもらうこと。そして受賞者を喜んで市として受け入れられるようにしていくこと。
こうした取り組みが実施最初の段階から実行できているDEEP VALLEY Agritech Awardは農業の未来を作り出すための本当に新しくユニークな取り組みとなり、今3年目を迎えている状況となっています。
第一回目2019年は19件のエントリー、第二回目2020年は28件のエントリーがあり、応募者のみなさんはそれぞれ農業の未来を変革するための提案を実施してくれました。毎年、応募者が本当に白熱したプレゼンテーションを実施してくれているとともに、審査する側も、深谷市の農業関係者、有識者含めて全員が「深谷市の農業」のために審査を行っています。これまでの2年ですでに受賞者の中で、深谷市で実証実験を開始した企業が数社存在します。
次回はその実証実験を始めた企業のご紹介をおこない、実際のアグリテック集積の現場をお送りしたいと思います。
【「ビジネス視点」で読み解く農業】「農業」マーケットを如何に採算のとれるビジネスとして捉えていくか-総合農業情報サイト『マイナビ農業』の池本博則氏が様々な取り組みを事例をもとにお伝えしていきます。更新は原則、隔週木曜日です。アーカイブはこちら