転職・起業

雇用不安に備える女性 学び直しでスキルを複線化

 とりわけ女性に雇用不安を招いたとされるコロナ不況。今月公表された令和3年版男女共同参画白書は「女性不況」との言葉も用いて、女性へのしわ寄せの深刻さを指摘した。一方で、雇用の不安に直面した女性たちが、新たな職につながるスキル(技能)を得ようと、学び直しへの関心を高めている。都内のWebデザインスクールでは、元飲食店員など、これまであまり見られなかった職種からの受講も見られるという。スキルと収入源を複線化することで、危機に備えたいとの心理が働いているようだ。(津川綾子)

 「育児に専念した期間を終え復帰しようとしたとたんに、仕事が白紙になってしまった」

 昨年4月の出来事をこう振り返って話すのは、都内在住のフリーランスの映像編集者、坂田祥子さん(41)=仮名=だ。子供(当時4カ月)の保育園入園と同時に映像編集会社で午前10時から午後4時まで働く予定だったが、コロナ禍で撮影が中止や延期となったため、仕事が立ち消えに。幸い、個人事業者向けの持続化給付金は受け取れたが、描いた仕事の計画が水の泡となった。

 思いもよらない事態だったが、「複数のスキルがあれば潰しがきくはず」と思い直し、仕事のない8月の1カ月間、Webデザインの授業をオンラインで受講することに。子育て中の女性にWebデザインや動画作成を教える「Famm(ファム) ママ専用Webデザイナー養成講座」で学んだ。

コロナ禍で受講層変化

 「コロナ禍を境に、以前は事務職が多かったが、飲食業やアパレル業などに勤める女性の受講が増えている」と話すのは、同講座の運営会社タイマーズ(東京)の執行役員、栗城良規さんだ。コロナ禍で打撃を受けた業界の人が目立つようになった、という。

 実際にコロナ失業後、Webデザインの仕事を得た元受講生もいた。都内在住の佐久間直未さん(34)は昨年4月にコロナ禍のあおりで失業したが、過去に受講して得たWebデザインのスキルを生かし、今はユーチューブ動画のタイトル画面作成の仕事を得ている。「育休中に苦手を克服したいとの思いで学んだことが思わぬ形で役立った」と話す。

不況が「備え」促した

 コロナ不況の女性へのしわ寄せは、数字からも明らかだ。総務省の労働力調査によると、最初に緊急事態宣言が発令された昨年4月、雇用者数(季節調整値)の落ち込みは女性に顕著で、前月に比べ男性は35万人減、女性は74万人減に。内閣府の「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」が今年4月にまとめた報告書では、その背景として、コロナで大きな打撃を受けた飲食・宿泊業などの雇用者は女性の割合が高く、かつ女性の非正規雇用の割合が高かったことを挙げた。

 一方、雇用の落ち込みに反比例して高まったのが、新たなスキル習得への関心だ。社会人の学び直し講座の情報検索サイト「マナパス」では、コロナ禍で女性のアクセス件数が増加。今年1月は前年同月の約12倍となる3535件となった。今でもビジネス系講座のアクセス件数上位は、女性向けのものが占める。

 女性の学び直し需要の高まりについて、関西学院大経営戦略研究科の大内章子教授(人的資源管理)は、「コロナ禍で雇用を失うことが多かったのは非正規雇用の女性。今後も同じ事態が起こりうると想定し、学び直しによるキャリアアップや、キャリアチェンジを考え始めたのではないか」と指摘。また、今後は中核を担う人材以外は、リストラに直面する可能性も高まるといい、「自立できるように学んで備える必要性は高まるだろう」としている。

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