社会・その他

五輪パラ警備、無観客でも史上最大規模約6万人 サイバー攻撃の懸念も

 東京五輪の開幕まであと1週間。警察庁は16日、五輪開幕からパラリンピック閉幕までの期間中、全国で過去最大規模となる約5万9900人の警察官が警備に当たると明らかにした。新型コロナウイルスの影響で無観客となったが、競技会場などの警備を行う民間警備員は1日最大1万8100人で、こちらも過去最大規模。酷暑の中、感染防止にも気を配りながら1カ月以上にわたる前代未聞の警備が始まる。

 無観客開催の余波

 9都道県42会場で行われる東京五輪。大会のメインとなる東京では、すでに全国から派遣された警察官が街頭に立っている。12日から都内に緊急事態宣言が再発令されたことに加え、静岡県熱海市で発生した土砂災害などを考慮、当初より人員は削減されたが、それでも派遣組の約1万1600人を含む約3万6500人が首都を守る。

 テロの標的として最も懸念されていたのは、観客で混雑する最寄り駅と競技会場を結ぶ区間「ラストマイル」と、競技会場外で大会を楽しむことができる「ライブサイト」やパブリックビューイング(PV)だった。いずれも人が密集することから、被害が大きくなる恐れがあったが、都内の競技会場は無観客となり、ライブサイトやPVは全て中止となった。

 とはいえ、競技会場が分散し、警備対象が広範囲に及ぶため、「無観客でも大会が開催される以上、警備体制は大きく変わらない」(警察幹部)。逆に、コロナ禍での生活不安や、五輪を反対する声の高まりなどによる影響が懸念されている。

 民間やAIの活用

 警察官以外の警備で重要な役割を担うのは民間警備員とAI(人工知能)だ。

 民間警備員は大会前後の期間を含めた全体で延べ60万1200人を動員。警備員が身体などに装着する小型の「ウエアラブルカメラ」の映像を警備本部とやり取りし、異変があった場合、警察や救急隊を現場へ急行させる態勢を整える。

 セキュリティーフェンス上などにはカメラ約8千台を配備。関係者の入場口に五輪史上初となる顔認証装置約300台を設置する。エックス線検査装置は約千台、車両下部検査装置は約100台を用意した。

 選手村や競技会場が臨海部に多く位置するため、海上保安庁などと連携するほか、お台場エリアの雑踏警備に向け、地上の様子を広範囲に撮影できるバルーンカメラも設置した。

 サイバー攻撃「格好の標的」

 懸念が高まっているのがサイバー攻撃だ。過去の五輪でもウイルス感染や情報漏洩(ろうえい)が続発。2012年ロンドン大会では2億回ものサイバー攻撃が確認され、開会式では会場の電源システムを狙った異常な大量通信を感知した。18年平昌大会でも準備期間中に約6億回、大会中に約550万回の攻撃が確認された。

 関係者は「力を誇示するには五輪は格好の標的になる」と警戒する。

 無観客開催で配信による中継の利用者も増えるとみられ、オンライン化が進むセキュリティーチェックや競技の進行・記録もサイバー攻撃の対象になりうる。

 組織委はサイバー攻撃に対処する情報システム部門を一体化したチーム「CIRT2020」を立ち上げているほか、政府も対策に乗り出している。

 内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は関係団体に、攻撃への対処態勢を整備できているか事前のリスク評価を実施。攻撃された場合には、サイバーセキュリティ対処調整センターを通じて関係組織間で情報を共有するよう、訓練を重ねて対策を練り上げている。

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