他人のせいにしてしまう
そこでおすすめなのが、逃げる理由に、他人を使うことです。たとえばワクチンに反対する人に対しては、「夫が接種しろとしつこく言うので、仕方なく打つことになった」とか「ワクチンを打たないと親が帰省させないと言うので、しょうがなくて」など。接種を強要する人に対しては、「友だちが接種したら、副反応でとても苦しそうだったから、今はちょっと様子を見ている」などです。
この程度なら、多少のウソが入っていてもかまわないと思います。コミュニケーションを円滑に行うためには許される範囲でしょう。人間関係を円滑にするためだと割り切って、相手の承認欲求を満たしつつ、うまく逃げるのがベストではないでしょうか。
人はなぜ陰謀論に影響されてしまうのか
ワクチンに反対する人の中には、「副反応が心配だから」という人もいますが、陰謀論に影響された人も多くいるようです。なぜ、新型コロナに関する陰謀論が広がっているのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症は、比較的最近に突然広がり、今も未知の部分が多い病気です。そしてそのワクチンも、最近開発され、使われるようになったもの。病気に対してもワクチンに対しても、不安や恐怖感を持つのは自然なことでしょう。
わかりにくいものを、わかりにくいままにしておくのは、余計に不安です。未知のものを、未知のままにしておくのは怖い。誰か、何でもいいので未知のもの、わかりにくいものを、シンプルに説明してほしい。そうした心理から、陰謀論にすがってしまうのです。
さらに、このように不安にかられているときは、情報を収集するときも、つい自分の考えをサポートしてくれる情報を集めがちです。特にネットの情報は、一度特定の記事を読むと、似たような内容の記事ばかりを勧めてくるという仕組みになっているので、異なる意見の記事が目に入りにくくなります。
こうした仕組みは、例えば一度気に入ったデザインの靴を見たら、似たようなデザインの靴の情報を見せてくれたりするので、便利な時もあります。しかし、もし陰謀論にのっとった意見の記事を見ると、どんどん似たような陰謀論の主張の記事ばかり目に入るので、どんどんゆがんだ主張に影響されてしまいます。
このような傾向は、コロナウイルスやワクチン接種に限りません。普段から、あえて自分と違う意見を調べてみようという姿勢が、現代のネット社会で生活するうえでは必要だと思います。
井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務
(産業医・精神科医 井上 智介 構成=池田 純子)