社会・その他

「行政に重大な過失」 熱海土石流、文書公表で遺族憤り

 静岡県熱海市で7月に起きた大規模土石流をめぐり県が18日に公表した行政文書からは、不適切な盛り土を問題視した市が措置命令や停止命令を検討したものの、最終的に見送っていたことが明らかになった。約10年前から数度にわたり崩落が起き、県が把握していたことも判明するなど、改めて「人災」の色合いが強まり、遺族は憤りをあらわにした。

 「行政に重大な過失があったと言わざるを得ない」。土石流で母を亡くした「熱海市盛り土流出事故被害者の会」会長の瀬下(せしも)雄史さん(53)は18日に東京都内で記者会見し、県や市の対応について、語気を強めた。

 7月3日に発生した土石流では、盛り土を含む約5万6千立方メートルの土砂が家屋を押し流しながら約2キロ下の伊豆山港に到達。県はこれまでに26人の死亡を確認したが依然、太田和子さんの行方が分かっておらず、警察や消防が捜索を続けている。

 県が公表した文書によると平成28年2月、県の担当者が、盛り土で工事を行ったことのある会社の関係者から「崩落までは時間の問題だ」などと連絡を受けていたことが判明。瀬下さんは「(行政の)不作為という生易しいレベルではない」と批判した。

 弁護団長を務める加藤博太郎弁護士も「長年違法な盛り土が放置されていることを認識していたにも関わらず、処分命令を出さず業者にお茶を濁された行政には、明らかに過失があると考えている」と述べた。

 一方、文書では、盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)側が20年8月、盛り土をめぐり県と市の担当者と協議した際に「行政は否定ばかりするな」などと発言したとも指摘された。

 これについて、瀬下さんは「行政に対する恫喝(どうかつ)にほかならない。(業者側の)悪質さが浮き彫りになった」と言及。加藤弁護士も「何度も盛り土に対する行政指導があったにもかかわらず、業者が従わずに故意に造成を続けていた。まさに人災で起こるべくして起こった事件だ」と話した。

 瀬下さんら遺族は、起点の土地で不適切な盛り土をしたとして、土地の旧所有者である不動産管理会社と、現所有者を刑事告訴。また、被災者ら70人が計約32億円の損害賠償を求める民事裁判を起こしている。

 県や市については「ただちに法的責任を追及するというより、被災者への救済を進めてほしい」(加藤弁護士)などとして、現時点では訴訟を起こす予定はないという。瀬下さんは「業者への措置命令を取りやめたエビデンス(証拠)はあったのか、行政には自分たちの過失を認める総括をしてほしい」と注文を付けた。

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