デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は金融とITを組み合わせたサービスを提供する「FinTech(フィンテック)」です。大手町や丸の内は世界有数の金融拠点として知られ、フィンテック系のスタートアップが続々と集まっているため、今回のテーマに決定しました。
テーマ概観を説明するのは白石卓也です。幅広く金融機関向けコンサルティング業務に従事してきた経験を踏まえ、フィンテックの大局的なトレンドと今後の方向性を説明した上で、スタートアップの紹介をします。
進むサービスの多様化
フィンテックはQRコードやモバイルによる決済、家計簿アプリなど、融資や決済、送金、投資といった一般消費者向けのサービスがよく知られています。また、会計・労務サービスに代表される企業の業務支援や仮想通貨領域でも、サービスの多様化が進んでいます。
銀行と外部事業者との安全なデータ連携を可能にするオープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)などの規制緩和を背景に、フィンテック系ベンチャー企業の国内の市場規模は成長しています。矢野経済研究所が2019年に実施した「Fintech市場に関する調査」によると、18年度は2145億円でしたが22年度は1兆2102億円まで拡大する見通しです。
グローバルで投資が活発化
グローバルで見るとフィンテック企業への投資は活発に推移しています。17年度から18年度にかけては、世界最大のモバイル・オンライン決済プラットフォーム「アリペイ」を運営するアント・フィナンシャルサービスグループ(中国)が約140億ドルもの資金を調達したため、急成長を遂げたとみられています。
フィンテックの大きな流れとしては、インターネット上で大規模なサービスを提供しているプラットフォーマーと、切っても切れない関係を構築している点です。米国ではGoogle、Amazon、Facebook.Appleの4社を指すGAFA、日本ではヤフーとLINE連合がフィンテックを取り込み、自動車から農業に至るまで各産業に影響を与えるというイメージです。
“イミ投資”で成長
投資も消費と同様、「モノ」から「こと」へと移動しており、今後はESG(環境・社会・ガバナンス)や持続可能な開発目標(SDGs)などを対象にした「イミ投資」が活発になると思われます。自分が投資したお金がどんな社会課題の解決につながるのか、それが環境問題にとってよいのかなどを気にする世代が増えてくるからです。
これからは「イミ」消費や「イミ」投資のニーズをくみ取って、個人や企業から流れたお金にテクノロジーを掛け合わせるフィンテック系ベンチャーが成長すると予測しています。
おつりを分散投資
今回はフィンテックの代表的な企業や保険領域など、幅広いスタートアップが登壇します。
ボトルト(東京都渋谷区)は「マイボトルをもっと使おう、もっとスマートに」をテーマに、ペットボトル削減行動をソーシャルファイナンスに変える事前決済プラットフォームを展開しています。ユーザーはアプリで飲料を購入できる店舗を探し、スマートフォン上で決済。決済画面を店舗で提示するだけで、すぐにマイボトルに飲料を入れてもらえる仕組みです。
「すべての人を投資家に」をビジョンに掲げ、おつりでコツコツ長期にわたって分散投資を行える、おつり投資アプリ「トラノコ」を展開しているのがTORANOTEC(同港区)です。5円から1円刻みで投資でき、貯まったポイントやマイルでの投資も可能。また、サービス内で提示されるアンケートへの回答や動画の視聴などによって獲得できるポイントも、現金と同様投資に利用可能です。
AB Cash Technologies(同渋谷区)は「お金に関する不安に終止符を打つ」をミッションに、平成初期に生まれたミレニアル世代を主なターゲットとしたお金のトレーニングスタジオを展開。プロのパーソナルコンサルタントが、マンツーマンで資産管理を支援する3カ月間のトレーニングを実施することで、「お金の不安」をなくし、豊かな人生を送ることができるきっかけを提供していきます。
融資を受けたい個人と行いたい金融機関をマッチングさせるサービスを提供しているのはクラウドローン(同千代田区)です。ユーザーは年代や配偶者の有無、年収といった質問に回答。個人情報を開示せず、迅速に希望に応じたローンの提案を受けられます。信用情報の毀損リスクも低減可能で、2020年1月という直近のリリースにかかわらず9銀行が参画しています。
IB(同渋谷区)は「請求もれのない世界へ」を目標に掲げ、保険証券を撮影するだけで加入保険を簡単管理でき、請求漏れを防ぐアプリ「保険簿」を展開しています。事前にアプリに登録しておくことで、情報が管理され、加入保険の中から請求できそうな保険をレコメンド。推計で年間1.6兆円に達するとみられる請求漏れを防ぎます。
withコロナで改めて脚光
2008年の金融危機では既存の金融機関やシステムの欠陥を露呈しましたが、それが契機となって世界中にフィンテックブームが起きました。今回もCOVID-19がきっかけとなり、フィンテックベンチャーの活躍の場がさらに広がると思われます。
【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら