Fromモーニングピッチ

リモートサービスが急拡大 アフターコロナの新たな価値創造へ

永石和恵

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は離れた場所でサービスを受けることができるリモートサービスです。

 テーマ概観を説明するのは永石和恵です。ベンチャー企業で10年間にわたり、主に人事関連のキャリアを積み重ね、2016年に当社に入社しました。現在はモーニングピッチの運営統括に携わっています。

 登壇したことがあるベンチャーのニュースリリースを入手して毎週発信していますが、COVID-19を踏まえさまざまな企業がコロナに対応したリリースを発表しており、リモートサービス特集を急遽立ち上げることにしました。

 このサービスについては、これまで対面で行っていたものをリモートで対応することにより、そのメリットをうまく活用して新しい価値を創造することと定義しています。単なる代替えツールではなく、対面活動をリモートに移行したことで新しい付加価値を生み出すサービス領域です。

 COVID-19 を契機に私たちの「Work」「Life」「Communication」という社会活動はそれぞれ、「Remote-Work(リモートワーク)」「Smart-Life(スマートライフ)」「Online- Communication(オンラインコミュニケーション)」に移行しつつあります。これに伴い新しい付加価値が生み出されています。これからの代表的な事例はリモートワークやリモートフィットネス、オンラインを活用した医療診断、イベント、飲み会などです。

 リモートワークの注目高まる

 先日、モーニングピッチの会員を対象にコロナによって経営面でどのような影響を受けるのか、といったアンケートを実施しました。投資が増えると予測される領域はリモートワーク、医療、オペレーションの自動化、物流などが上位を占め、最上位はリモートワークでした。COVID-19によって新たな課題も明確になってきましたので、さらにリモートへとシフトする動きが急速に進んでいくことでしょう。

 リモートワークを実施している企業の8割はCOVID-19を契機に初めて導入しており、週3日以上がそのうち半分近くを占めています。必然的に在宅勤務も進んでいます。全国4000社以上に導入されているスマートロック「akerun(アケルン)」の入退出管理データによると、東京の出勤抑制率は7割近くに達していることが分かりました。リモートワークに欠かせないWi-Fiの家庭普及率は約8割と言われており、速度などの問題は残るとしても環境は整っていると感じています。

 オンラインで歌舞伎を提供

 また、業種業態を問わず、あらゆる企業がリモート化やデジタルシフトを進めています。とくにオンライン型事業の導入が相次いでいまして、Airbnb(エアビーアンドビー)は体験サービス、ベネッセは幼稚園、新国立劇場は歌舞伎を提供しています。 

 リモートサービスについては注目領域として(1)働き方(2)イベント・交流(3)ライフ(衣食住)(4)ヘルスケア・医療(5)教育(6)エンタメ・スポーツと、6つに分類しました。このうち今回は(1)から(3)に焦点を当てます。

 まず働き方系の事例としてはSansanがオンライン名刺サービスの提供を開始しました。名刺送付用のURLが発行できて、それを通じオンラインで名刺交換を行えます。

 電子政府として知られるエストニアと日本に拠点を構え、デジタルIDやブロックチェーン技術を活用したデジタル社会の身分証を提供するblockhive(ブロックハイブ)は、スマートフォンから電子証明が可能な電子契約サービス「eサイン」を立ち上げました。政府は行政手続きに必要な対面や押印といった慣習や法規制を早急に見直す方針を打ち出しており、同様のサービスが注目を集めそうです。

 イベント・交流系ではZoomが急激に広まり、Skype Meet NowやGoogle Meet、Facebook Messenger Rooms などビデオ通話機能が日に日に機能拡充され使いやすくなっています。

 買い物代行で「密」避ける

 ライフ系では、お買い物代行サービスのツイディが、国内のPOSレジ市場で約半分のシェアを誇る東芝テックと資本業務提携を行い、今後拡大が見込まれる生鮮食品などのECサービスの拡大に向け協業検討を進めます。同時に、買い物代行をした品物を玄関の前に置き配してくれる「ピンポン置き配サービス」を開始しました。スーパーでの密を回避したい顧客に応えるためのリモート買い物です。

 今回はリモートワーク、スマートライフ、オンラインコミュニケーションという3つの区分から6社のベンチャーを紹介します。

 オンラインイベントを活性化

 Voicy(ボイシー、東京都渋谷区)は音声で情報を発信するボイスメディア事業を展開しており、新たなサービスを立ち上げました。それが社内ラジオ「VoicyBiz(ボイシービズ)」です。法人向けに特化したサービスで、社長日報のような情報やトークバラエティ的な番組を、生の感情に近い形によって伝達できる点が売り物です。Withコロナ時代の課題となる社内のコミュニケーションを乗り切っていきます。

 EventHub(イベントハブ、同新宿区)は、イベント管理システムを提供しています。主催者、参加企業同士のコミュニケーションを促進し、マーケティング効果を高める管理システムを提供しています。COVID-19によるイベント自粛に伴い、ウェビナー(ウェブセミナー)・オンラインイベントツールのサービスを拡張しています。PC・スマホから参加し誰がどれだけ視聴しているのかなどを計測でき、その後の商談化率を高めることが可能です。リアルに集合せずとも顧客とのタッチポイントを増やしオンラインイベントの活性化を目指します。

 オンライン飲み会サービス「たくのむ」を展開しているのが1010(同)です。ログイン不要、時間制限なし、無料でURLを共有するだけで飲み会を開催できます。オンライン店舗をオープンできる「お店プラン」の提供も開始し、飲食店をはじめとした「お店」をオンライン上で開くために必要な決済などの機能も提供しています。今後は飲食デリバリーや各種オンラインコンテンツとの連携も進めるなど、付加価値をつけて宅飲み会をより便利にします。

 ベルフェイス(東京都渋谷区)は「デスクで営業する時代へ」をビジョンに、電話しながら対面以上の商談を可能にするオンラインツール「bellFace(ベルフェイス)」を販売しています。ITリテラシーを問わず、誰でもスムーズに使える点が売り物でサポート体制も充実しています。今後はセールスデータ領域に着手。ブラックボックス化していた営業パーソンのスキルの可視化、解析に注力します。

 通話しながら一緒に動画

 ピカブル(同港区)は好きな人と通話をしながら動画やウェブサイトを楽しめる次世代通話アプリ「Picable(ピカブル)」を提供しています。スマホ上で、おしゃべりをしながらドラマや映画を楽しんだり、隣にいるような感覚で情報サイトを見て旅行の計画を立てたりすることができます。COVID-19後はエクササイズ動画を流しながら友達と一緒に、それぞれの自宅で運動するといった使い方もされています。

 インサイドセールスやマーケティングの成果向上支援をする、SNS営業自動化サービス「ChatBook(チャットブック)」を提供しているのがチャットブック(同)です。マーケティングから営業が受注するまでの流れやアフターフォローを自動化し、営業がクリエイティブな仕事に集中できる状況づくりをサポートします。テレワーク時代で最も困難を極めるのは新規営業です。こうした事態を打破するのがChatBookです。

 リモートサービスにはメリットとデメリットの部分があり、デメリットの部分の課題解決を図ることが普及につながります。例えば物理的な部分だと遠距離でも繋がることができるのに対し、コミュニケーション体験が希薄になったり運動不足になったりすることが欠点です。効率化の課題はマネジメントやメンタルケアを行いにくい点。通信環境はログを残しやすく蓄積・分析による改善を図れるメリットがある一方で、システムへの負荷や情報漏洩リスクを抱えています。

 こうした問題に確実に向き合って対応していけるベンチャーが、このリモート化の次の時代で本格的に台頭してくると考えています。

学生時代からITベンチャー企業へ参画、その後大手ネット広告代理店と2社で計10年の人事キャリア。1社目のベンチャーでは、上場前メンバーとして人事採用チームの立ち上げを経験、上場後にHR領域マネジメントと経営企画IR業務を担当。2016年より現職で、スタートアップ個別支援や、イノベーションエコシステム構築に従事。ベンチャーと大企業の協業マッチングプラットフォームMorning Pitchの運営統括。

【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら