CONNECT in 丸の内

導入数1万5000超 Webサイト多言語サービス、飛躍の裏側

東京21cクラブ

 「Founders Night Marunouchi」は、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得ることを目的に、三菱地所が運営する起業家支援コミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」との共同開催のイベントシリーズです。2019年10月より月2回、新丸ビル10階にある東京21cクラブにて開催しており、2020年4月からはオンラインにて開催しています。

 2020年9月16日に開催された「Founders Night Marunouchi」では、Wovn Technologies株式会社(ウォーブン テクノロジーズ)取締役副社長 COOの上森久之さんをお迎えしました。

 「世界中の人が、全てのデータに、母国語でアクセスできるようにする」

 上森さんは力強く語ります。同社は情報のアクセシビリティを高めるために、Webサイトやアプリを最大41言語・75のロケール(言語と地域の組み合わせ)に多言語化するソリューション「WOVN.io(ウォーブン・ドットアイオー)」「WOVN.app(ウォーブン・ドットアップ)」を提供しています。

 WOVN.ioは、資生堂ジャパンや三菱UFJ銀行、富士フイルムなど多くの大企業で導入され、現在の導入サイト数は1万5000以上にものぼります。成長をしていくうえでは、公認会計士やコンサルタントといったこれまでのキャリアが役立ったと上森さんは振り返ります。

 そこで今回は、上森さんのこれまでのキャリアを紐解きながら、同サービスの成長の軌跡や展望について伺いました。モデレーターは Peatix Japan取締役 藤田祐司さん、そして東京21cクラブ運営統括の旦部聡志が務めました。

多言語体験へのこだわりが強み

 海外展開を見据える国内企業や訪日観光客の増加などに伴い、Webサイト多言語化ソリューションの需要は日に日に増しています。競合他社も増えるなかで冒頭、旦部からは「WOVN.ioが他社と比べて実績を積み重ねられた理由は何だったのか」という問いが投げかけられました。

 「私たちがWOVN.ioを始めた2014年には、日本でWebサイト多言語化ソリューションを提供している企業はほとんどいませんでした。こうしたサービスはデータが蓄積すればするほど、精度が高まります。この領域にいち早く目をつけてチャレンジしたことで先行優位性を築くことができた。それが現在、競合との大きな差異につながっているように思います」

 とはいえ、同サービスが多くの企業に選ばれているのは先行優位性だけが理由ではありません。同社はユーザーが言語に触れる際の「多言語体験(Multilingual Experience)」の最適化に力を入れており、これが大きな差異化につながっていると上森さんは言います。

 「例えば、日本語で5文字の単語を英語に訳すと倍以上の文字数になってしまうことがあります。文字数が変わったことでWebサイトやアプリのデザインが崩れ、ボタンが押せなくなってしまうことも。また、元サイトで更新があっても翻訳サイトに反映されず、最新情報へアクセスできなくなってしまうケースもあります。WOVN.ioは、多言語化対応に伴うフォントやデザインの崩れを最新技術で解消。元サイトが更新された際は自動で通知を送るシステムも導入するなど、細かいUI/UXにおける工夫をこらしています。それが良質な多言語体験につながり、選ばれる理由になっています」

前職で培った“提案力”が事業成長の鍵に

 もともとデロイト・トーマツにて、新規事業やオープンイノベーションのコンサルティング、会計監査、M&A関連業務などに従事し、公認会計士としての資格も有する上森さん。自身のキャリアで培った知見も、サービスの成長に寄与したのではないかと語ります。

 「公認会計士はその職務上、上場企業の取締役しか知らないような人事ルールを知れたり、株主総会の議事録などを見たりすることができました。さらに、業態や企業規模によって意思決定のフローがどう変わるのかも頭に入れることができた。こうした経験が、現在クライアントに提案をする際に活きていると感じます」

 同時にコンサルタントとしての経験も、提案力につながったと上森さんは言葉を続けます。

 「公認会計士が過去を見る職種だとすれば、コンサルタントは未来を見据える職種です。クライアントが今挑戦すべき時なのかどうかを経営状況などから判断できるのもコンサルタントというキャリアが活きている点だと思っています。今無理にご提案しても、話が進まないだろうなとか、今相手が求めているサービスは何なのだろうと、経営状況を踏まえつつご提案するようにしていますね」

 公認会計士とコンサルタントというこれまでのキャリアで培った2つの視点が、それぞれの企業に寄り添った提案力へとつながり、WOVN.ioの成長を後押ししてきたのです。

 最後に、上森さんから今後の展望が語られ、イベントは締めくくられました。

 「現在、社員数は100名を越え、約20カ国から優秀なメンバーが集まってきてくれています。多様なメンバーが心地よく、そして能力を発揮しながら働けるよう、社内の環境整備を進めることが急務だと考えています。とはいえ、組織が成長の過程にある今、社内にはまだ解決すべき課題が山積みです。課題整理を進めながら、優秀なメンバーたちとともにWOVN.ioを国内だけでなく世界でトップシェアを誇るサービスに必ず成長させていきたいですね」

三菱地所が運営する「東京21cクラブ」は、ビジネス・アクセス共に利便性の高い東京駅前・新丸の内ビルに拠点を構え、国内外の先端スタートアップや大企業、その他様々なプロフェッショナル約600名が集うオープンイノベーションに特化した起業家支援コミュニティです。オンラインを含むイベントやセミナーなどを通じて、ミートアップなどの企業同士の交流の場を提供し、新規事業開発支援を行っています。

【CONNECT in 丸の内】では、三菱地所が運営する国内外のスタートアップとそのサポーター約600名が集う起業家支援コミュニティ「東京21cクラブ」による、イノベーション創出支援を目的とした活動の一部をご紹介します! アーカイブはこちら