CONNECT in 丸の内

世界で活躍するスタートアップ2社が語る 高い技術力と競争力を保持する工夫

東京21cクラブ

 スタートアップが独自の先端技術とアイデアを生かし、世界で活躍するためには何が必要か--。「丸の内フロンティア定例会」は、スタートアップ企業や大企業のビジネス展開に役立つ知見の拡大やメンバー同士のコミュニティー強化を目的として、東京21cクラブメンバーとオープンイノベーションプラットフォーム「TMIP(Tokyo Marunouchi Innovation Platform)」会員を対象に、新丸ビル10階にある東京21cクラブにて約3カ月に1回のペースで共同開催しています(現在はオンラインで開催)。

 今回登壇いただいたのは、深層学習技術をさまざまな業界に実装している株式会社Preferred Networks 執行役員 最高業務責任者の長谷川順一さんと、与信審査がネックとなって金融サービスを利用できずに自動車を購入できなかった人々に、FintechとIoTを駆使した新しい自動車ローンを提供するGlobal Mobility Service 株式会社代表取締役 社長執行役員CEO 中島徳至さん。いずれも独自の先端技術とアイデアを生かし、グローバルに活躍するスタートアップです。

 モデレーターは東京21cクラブメンバーでもあり、テクノロジードリブンベンチャーの起業支援やエンジェル投資を行うTomyK Ltd.代表 鎌田富久さんです。

 イベント冒頭では、両社を支える最先端技術の概要や、大企業と協業をすすめる際のポイントを語っていただきました。後半のセッションでは、そうした環境下において、テクノロジードリブンベンチャーが高い技術力と競争力を保持し続けるためにはどうしたらよいのかが議論されました。

 テクノロジードリブン企業が競争市場で生き残る秘訣

 新型コロナウイルスの影響で各業界でのDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する意識が加速した一方で、同時に競合も多くなりつつあるといいます。

 長谷川さん「技術力を高い水準に保つためには、自分たちの実力を的確に把握しつづけなくてはなりません。そのため、世界各国のコンテストへの出場や、国際学会への論文投稿は欠かせません。例えば、弊社の深層学習用スパコン『MN-3』がGreen500で世界1位を獲得したのもその一つですし、他にも2019年には国際的な画像認識コンテストで世界3位を獲得しています。こうした結果をもとに自分たちの実力を客観的に把握しつづけています。また、コンテストは実力を測る側面もありますが、私たちの技術を社会に伝えるための手段でもあります。今、数多くのテクノロジー企業が生まれているので、協業先にとっては技術の比較が難しい状況です。コンテストの成果は、弊社を選んでもらうための一つの指標になるとも考えています」

 一方、中島さんは競争力保持につながるのは人材であり、その人材採用の鍵となるのは強いビジョンだと語ります。

 中島さん「弊社には、青年海外協力隊などへの参加経験がある社員や、社会課題への強い問題意識をもって大企業から転職してくる社員も多いんですね。つまり、社会課題を解決したいという強い内発的動機をもった人材が集まっているのです。それを可能にしているのは弊社の『モビリティサービスの提供を通じ、多くの人を幸せにする』という経営理念と『真面目に働く人が正しく評価される仕組みを創造する』というビジョンだと考えています。経営理念とビジョンによって志を持った優秀な人が集まり、強い事業をつくる源になるはず。高いスキルを持つ人材が集まり、一つの方向に向かっていくための経営理念とビジョンこそが、事業競争力につながると言えるのではないでしょうか」

 大企業との共創で大切なのは、共感しあえているかどうか

 イベントの最後、モデレーターの鎌田さんからお2人に対してこんな質問が投げかけられました。

 「ベンチャー企業が世界に向かって飛躍していくためには、他企業との協業が大きな鍵となります。両社はこれまで大企業との協業を次々と成功させてきました。協業において大切にしてきた視点などはあるのでしょうか?」

 この質問に対して、トヨタ、ファナック、エネオス、中外製薬、東京エレクトロンなどと協業を進めてきたPreferred Networks、川崎重工業株式会社、株式会社デンソー、大日本印刷株式会社、凸版印刷株式会社、広島銀行や大垣共立銀行と資本、業務提携を実現してきたGlobal Mobility Service両社の視点が語られました。

 長谷川さん「機械学習や深層学習を生かしたサービス開発をご提案すると、現場プレイヤーからは『この技術を導入すると、僕たちの仕事がなくなってしまいませんか?』と質問をされることがあります。このような短期的な視点から判断されてしまい、協業が進まないケースも少なくはありませんでした。だからこそ、協業を進める際には、経営層と直接話すことを大切にしています。長期的な視点から同じ未来を見て、新たな価値を一緒に共創できるパートナーと協業を進めることが、なによりも重要だと考えています」

 中島さんも、この言葉に深く頷きながら話を続けます。

 中島さん「長谷川さんがおっしゃる通り、お互いの力を合わせて新たなサービスを生み出していくためには、長期的な関係性を見据える必要があります。協業レベルであれば、利害関係が一致しているだけでもよいかもしれません。しかし、資本提携など長期的な関係性を築くのであれば、どの方向を向いて進んでいくのかという理念レベルで、共感しあえていることが大切ではないでしょうか」

 テクノロジードリブンベンチャーとして世界で活躍する2社から語られた競争力維持の工夫と、影響力をさらに拡大するためのパートナーとの共創のポイント。これから世界に羽ばたこうとするベンチャー企業や、新しい価値を生み出そうとしている大企業にとっても参考になる部分が多かったのではないでしょうか。登壇してくださった2社の今後にも注目です。

三菱地所が運営する「東京21cクラブ」は、ビジネス・アクセス共に利便性の高い東京駅前・新丸の内ビルに拠点を構え、国内外の先端スタートアップや大企業、その他様々なプロフェッショナル約600名が集うオープンイノベーションに特化した起業家支援コミュニティです。オンラインを含むイベントやセミナーなどを通じて、ミートアップなどの企業同士の交流の場を提供し、新規事業開発支援を行っています。

【CONNECT in 丸の内】では、三菱地所が運営する国内外のスタートアップとそのサポーター約600名が集う起業家支援コミュニティ「東京21cクラブ」による、イノベーション創出支援を目的とした活動の一部をご紹介します! アーカイブはこちら