デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。ベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はFemtech(フェムテック)の男性版、メンズウェルネス特集です。
精液検査やAGAなど9領域に分類
Femtechはデジタル時代のライフスタイルや価値観をAIなどのテクノロジーの力を借りて再設計したヘルスケア・ウェルネスのソリューション群のことを指します。これを参考にしてメンズウェルネスのカテゴリーについては、ED(勃起障害)、精液検査、セルフプレジャー(自慰)、メタボリックシンドローム、AGA(薄毛)、コスメティック、睡眠時無呼吸症候群、メンタルヘルス、フィットネスに分類しました。「ヘルスケア」は疾患で、「ウェルネス」はより良い人生を送るために存在するものだと位置付けています。取り扱う領域は男性固有か男性向け(女性より男性に発症しやすい悩みへのソリューション)に限定しました。
美意識が高いZ世代
日本では30~40代の男性が内面・外見とも昔に比べると若返っており、それを目指す人が増えている印象を受けています。また、20代以下のZ世代の男性は美意識が高い人が多く、日常的な顔のスキンケアについては8割以上が「行っている」「行っていないが興味あり」と回答しています。こうした動向を裏付けるようにメンズコスメ関連の商品が伸びています。調査会社によると2018年の世界の市場規模は6兆5000億円でしたが、今後も年間平均成長率は約5%と高い伸びを示し、2024年に8兆7000億円まで拡大する見通しです。
D2C企業が台頭
とくに最近ではメーカーが自社で開発・製造した商品を、直接消費者と取引して販売するD2C企業が台頭しています。個性で勝負をかけているメーカーが多く、オーガニックを使用した商品や、60秒ケアというコンセプトを掲げ最小限の取り組みによってどこまで美容効果を発揮できるか、といった部分を追求する商品も注目を集めています。
メンズウェルネス商品を巡る動きを紹介します。高品質のスキンンケアブランド「BULK HOMME(バルクオム)」は、プロサッカークラブの川崎フロンターレとパートナーシップを締結しています。セルフプレジャー領域のTENGAは子会社を設立し、ED事業に参入しました。女性向けシャンプーを販売しているMEDULLA(メデュラ)は、男性向け市場に参入。これまでに培った知見を活かし頭皮を診断してそれぞれに合ったシャンプーを届けています。
今回は先ほど示しました領域の中から4社のベンチャーを紹介します。
郵送精液を検査し妊活を支援
広島大学発のベンチャーであるダンテ(東京都港区)は、郵送された精液を検査する「バディチェック」と男性妊活サプリ「ファミリープログラム」事業を通じ、男性の妊活サポート事業を展開しています。バディチェックでは精子を作り成熟させ、まっすぐ運動させるために必要な5つの成分を定量分析することに成功しました。広島大学などと共同開発したファミリープログラムは、2週間摂取するとまっすぐ動く精子が増加するなどの効果が表れています。調査会社によると不妊検査の市場規模は2020年で520億円でしたが、年平均成長率は7.5%と高く推移する見通しで、製薬・食品や保険業界などとの連携を進めていきます。
豊富な臨床データがある希少成分を使ったサプリ
日本人男性の3人に1人に相当する1800万人がEDに悩んでいるといわれ、男性不妊や夫婦仲による離婚など社会課題にも発展しています。アルファメイル(神奈川県鎌倉市)が立ち上げた性の悩みを解消するサプリブランドが「NP(ナイトプロテイン)」です。医薬品レベルの豊富な臨床データが存在する希少成分を採用し、スポーツ用サプリのようなスタイリッシュな印象を実現しています。トレーニングジムなど、新たなルートの開拓に期待が集まります。
指先採血で病気の予兆を知る
徳島大学発のベンチャー、メカノジェニック(千葉市稲毛区)は、メタボリックシンドロームリスクを指先の採血で診断するサービスを提供しています。検査の流れとしては、まずユーザーに自己採血をしてもらい、血液が付着したろ紙を同社に送付。そのろ紙を検査して測定結果をレポートにし返送する仕組みです。現在のメタボ検診では、高血圧やコレステロールの異常などすでに病気になってからのアプローチになっています。これに対して同社の検査では、脂肪細胞から血液中に分泌されるホルモンの一種「アディポネクチン」値だけを検査。病気になる前の予兆を知ることが可能で、最適なメタボ対策につなげることができます。
AIで薄毛の進行や頭皮状態を画像判定
日本にはAGAで悩んでいる男性が1200万人いると言われています。エムボックス(東京都中央区)は男性型脱毛症のセルフケアを支援するAGA管理アプリ「HIX」を提供しています。HIXは、AIが薄毛の進行や頭皮状態を画像判定する技術を備えています。これはクリニックにある数千の画像データをAIエンジニアが形にした独自の技術です。ユーザーは自分の髪の画像を撮影してアップロードを行い、問診に回答すると自分の薄毛の進行状態や髪に悪影響を及ぼす生活習慣などが診断される仕組みです。診断結果に基づいてユーザーごとに効果的なプログラムが推奨され、アプリからカウンセラーにチャットで相談することも可能です。
海外ではメンタルヘルス分野で有力ベンチャーが活躍していますが、日本はコスメティックなどの領域を除けば、メンズウェルネス関連のベンチャーはまだまだ少ないのが実態です。今後、COVID-19によって働き方改革が進むのに伴いストレスを抱える層が増え、メンズウェルネスに対するニーズが高まるのは必至です。ベンチャーが活躍する場も広がるでしょう。
【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら