デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は、国内外のベンチャー企業とスマートシティ領域で様々な実証実験などに取り組んでいる、ENEOSホールディングスとのコラボレーション特集です。
温暖化対策などに寄与
スマートシティとは地域が主体となり、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)の活用をはじめそれぞれの地域が持つ資源やポテンシャルを生かし、ビッグデータを活用した新たな価値を創造する取り組みと定義づけられています。
日本は人口減少やそれに伴う少子化といった問題に加え、温室効果ガスの削減、気候変動に伴う自然災害やCOVID-19対策といった課題に直面しています。こうした課題の解決を図るため、現場から得られる豊富なデータや企業・大学の技術力を活用してスマートシティを目指す潮流が全国に広がっています。
オープンイノベーションを推進
ENEOSは2040年のグループ長期ビジョンとして「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げています。それの実現に向けて、環境やエネルギー、交通モビリティなどスマートシティを構成する領域で、他社とのスピード感あるオープンイノベーションとデジタル技術の活用を進めています。
長期ビジョンの実現に向けて中核的な役割を果たすのが「未来事業推進部」という組織です。グループ本体から独立した決裁権限を持ち、スピード感のある投資が可能なENEOSイノベーションパートナーズ合同会社というCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)も運用しています。注力領域は「まちづくり」「モビリティ」「低炭素社会」「循環型社会」「データサイエンス&先端技術」の5分野で、この中からいくつかの事例を紹介します。
ラストワンマイルを電動キックボードで
利便性の高い低炭素のまちづくりを目指して取り組んでいるのがマルチモビリティステーションです。電動サイクルやキックボードなど様々なシェアリングサービスの活用でラストワンマイルを移動できるようにし、街の回遊性向上と環境負荷の低減に貢献する取り組みです。モビリティシェアサービスを提供するOpen Street、電動キックボードを開発するLuupと共同で事業を進めています。また、さいたま市では現在、4人乗り超小型電動自動車(EV)を活用したシェアリングに関する実証実験が行われています。
ドローン・空飛ぶクルマとEV蓄電池の交換サービス
ドローンと空飛ぶクルマに関しては、将来的にドローンが発着できるステーションを構築し、災害対応や配送サービス、空飛ぶクルマによる移動サービスなどを通じ地域の様々な課題解決につなげていきます。この領域では設備点検ドローンを提供するセンシンロボティクス、空飛ぶクルマを開発するSkyDriveとパートナーシップ契約を締結しています。
また、米シリコンバレーに本社を置くAmple社との協業により、EVの充電をガソリン車と同じように早く簡単に行える、EV蓄電池交換サービスの本格展開に向けた動きも進めています。既存のEV充電は長時間を必要とする点を踏まえ、ロボットを活用し、EV蓄電池を安く、早く、簡単に自動交換できるのが特徴です。常に新しい電池と交換されるため電池劣化を気にせずに利用することが可能です。
クレジット化で脱炭素の街づくり
CO2削減を新たな価値としてクレジット化しスタートアップなどへの投資を通じ地域の環境対策に貢献するなど、環境価値の活用による脱炭素の街づくりに向けた動きにも力を入れています。その一環としてCO2排出量を見える化するプロバイダー、ウェイストボックスと協業しています。
今回は低炭素なまちづくりや地域の環境対策に貢献するベンチャー5社を紹介します。
太陽光発電を可能とする道路
「太陽光発電舗装パネル Solar Mobiway」と「リユースEVバッテリー」を組み合わせた分散型電源により、自律型エネルギーサービスを展開しているのがMIRAI-LABO(東京都八王子市)です。太陽光発電舗装を可能とするソーラー技術により道路でエネルギーを貯め、街路灯を灯したりできる点が特徴です。目指しているのはバッテリーを活用した「BaaS」(Battery as a Service)プラットフォームの実現です。1次利用はモビリティのバッテリー、2次利用として蓄電池にリユースし、最終的にはリサイクルを行いバッテリー資源へと循環させていきます。その展開のため、バッテリーサービスステーションも順次展開を目指しています。
デリバリーに自動走行ロボットを活用
エニキャリ(東京都千代田区)は、クイックデリバリーに特化したプラットフォームを運営しています。ビジネスモデルの特徴は注文の受付から配達指示などの管理、配達業務をニーズに応じてカスタマイズできる点です。配達機能を持たない飲食店や小売店から自社のデリバリー機能をより効率化したいと考えている企業に至るまで、最適なサービスを構築できます。また、ラストワンマイルのインフラ整備にも力を入れており、ENEOSと自動走行ロボットを活用した協業を進めています。
窓ガラスを活用した太陽光発電
米国シリコンバレーに本社を置くUBIQUITOUS ENERGYは、世界初の透明な太陽光発電窓ガラス「ユビキタス・エナジー」を提供しています。シートをガラスの上に貼り付けることによって、窓ガラスの性能や美観にも影響を与えることなく、紫外線や赤外線という目に見えない光を電気に交換することが可能で、建物内で使う電力の発電を建物自体で行うことを目指しています。建物のほか家庭用電化製品、農業、自動車に使われるガラス部分に置き換えられる製品の開発も計画しています。
現場の紙帳票をシステム化
Mountain Gorilla(大阪市西区)は、製造現場の紙帳票をシステム化する業務改善システム「カカナイ」を提供しています。スマートフォンやタブレットを起点に業務効率の向上を図り、製造現場のデータを収集できるクラウド型課金モデルのサービスです。
オーダーメイド型で使いやすく拡張性が高い点が特徴で、使い勝手の良さからサービス継続利用率は99%以上という高い実績を誇っています。製油所での実証試験では年間36万円の利用料に対し、500時間を超える業務量の削減を達成しています。
磯焼け対策として陸上でウニを畜養
健全な藻場は海の生き物の産卵場所や住処となっています。CO2を吸着する役目も果たしており、地球温暖化対策を進める上でも重要な場所です。しかし浅海では海藻がなくなり砂漠のような「磯焼け」という現象が深刻化しています。要因の一つがウニによる食害です。駆除されたウニを陸上で畜養し、おいしいウニを育て海の環境保全と地域漁業、経済の持続的発展を具現化する循環型ビジネスを展開しているのがウニノミクス(東京都江東区)です。スマートシティの高度化に向け、こうしたベンチャーとの協業の動きも活発化するでしょう。
スマートシティに対するニーズは日本だけでなく新興国でも高まっています。急速な都市化によって渋滞や大気汚染、下水道などインフラ整備の不足といった問題に直面しているからです。このため日本もスマートシティ関連の輸出支援を強化しており、ENEOSが進めるようなベンチャーとのオープンイノベーションは加速するとみられます。
【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch(モーニングピッチ)」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら