【CONNECT in 丸の内】心電図解析や空のシェアリング 未来を開拓するスタートアップ5社の展望

2021.10.19 06:00

 「丸の内フロンティア定例会」は、スタートアップ企業や大企業のビジネス展開に役立つ知見の拡大やメンバー同士のコミュニティー強化を目的として、東京21cクラブにて開催しています。

 2021年9月15日の丸の内フロンティア定例会では、「Startup Pitch in Marunouchi」を実施しました。このイベントは、東京21cクラブメンバーに所属するスタートアップ5社がピッチを行い、コメンテーターから事業に対するフィードバックなどを得るものです。

 登壇したのは、株式会社Piezo Studio、株式会社コルシー、株式会社情報基盤開発、株式会社トルビズオン、株式会社SWAT Lab。

 コメンテーターを務めるのは、日本ベンチャーキャピタル株式会社常務執行役員の照沼大さん、一般財団法人エンデバー・ジャパンManaging Directorの眞鍋亮子さん、MASSパートナー法律事務所共同代表パートナー溝田宗司さんです。この記事では、白熱したピッチイベントの模様をレポートでお伝えします。

 Piezo Studio:“タイミングデバイス”の開発でIoT化を促進

 最初に登壇したのは、東北大発ベンチャー・Piezo Studio代表取締役の木村悟利さん。同社は電子製品の研究・開発を行っています。同社が持つ競争優位性の一つが、東北大学と共同開発した「CTGS圧電単結晶」と呼ばれる電圧材料です。この電圧材料を独自の技術で小型化し、振動子に組み込んだ「CTGS発振器」が、同社の主力製品だと言います。

 「CTGS発振器」はタイミングデバイスと呼ばれる製品に分類され、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの電子機器にも搭載されています。

 木村さん「タイミングデバイスが担う役割は二つです。一つは、規則正しい基準信号をつくり出す役割。もう一つは、安定した周波数を発生する役割です。タイミングデバイスには一定の周波数を生み出し、維持できる機能があります。情報通信が欠かせない現代において、なくてはならない存在です」

 昨今、電子機器の省電力化や通信の高速化などに対するニーズは高まっています。こうしたニーズにも、「CTGS発振器」は応えられると木村さんは続けます。

 木村さん「既存のタイミングデバイスは、作動開始から実際に機能するまでにタイムラグがあります。私たちはこの課題を解消すべく、作動した瞬間電流が流れ、スイッチを入れるとマイクロ秒の世界で機能するタイミングデバイスを開発しました」

 木村さんは、同社が開発する製品を普及させ、さまざまなIoTデバイスの開発・流通に貢献したいと目標を語ります。

 コルシー:専門医と患者をつなぎ、医療資源を最適化する

 続いて登壇したのは、心電図の遠隔判読サービス「CORSHY」を開発・運営している、コルシー代表取締役社長の堀口航平さん。

 堀口さん「患者が検査を受ける際に必要な医療機器は、さまざまな進化を遂げています。一方で現場に目を向けると、人手や資金の不足によって検査機器の導入が難しい状態です。また、医師には専門分野があるため、一人でカバーできる治療や検査にも限りがあります。」

 医師が専門分野外の診療・検査にあたるケースも少なくないなか、患者の心電図を見て疾患の種類などを把握する判読は、専門外の医師にとって特にハードルが高いと堀口さんは語ります。

 同社はこうした課題を解決すべく、患者の心電図を専門医が遠隔で判読するプラットフォームサービス「CORSHY」を開発しています。ユーザーとなる医師は同サービスを活用し、検査した患者の心電図データを送付することで、専門医による判読結果と具体的なアドバイスが得られると言います。

 堀口さんは、同サービスのサービス提供を通して「メディカルツーリズムの促進にも貢献していきたい」と将来の展望を語りました。

 「AI診断の精度が高くなっている印象がある一方で、『CORSHY』では医師による判読にこだわる理由はありますか?」という眞鍋さんからの質問に対して、堀口さんは以下のように答えました。

 堀口さん「たしかにAIの機械解析は優秀です。しかし、いくら解析は優秀でも、その結果をもとに医師や患者に対して具体的かつ的確なアドバイスを行うのはまだ困難です。AI技術の活用も視野に入れつつ、患者が常に最適なアドバイスを得るためのサービスを開発していきたいと思っています」

 情報基盤開発:紙からデジタルに、集計・分析を効率化

 続いて登壇したのは、情報基盤開発CFOの千保理さん。同社は、紙データの自動入力・集計システム「AltPaper アンケート自動入力」などを展開しています。

 「AltPaper アンケート自動入力」は、問診票やアンケート、申込書など紙に書かれた情報をExcelやCSVなどのデジタルデータに変換できるサービスです。Microsoftに導入されている言語にはすべて対応しており、海外でのアンケート収集などにも活用できると言います。

 現在同社では、アンケート集計技術を活かした「AltPaper ストレスチェックキット」の事業に注力。2015年に、労働者50人以上の企業に対し年1回以上のストレスチェックが義務化されて以来、ストレスチェック実施のためのツールの需要は、高まり続けていると言います。「AltPaper ストレスチェックキット」は、厚生労働省の推奨する調査票を採用しており、紙による受検とWebによる受検、双方に対応している点が特徴の一つだと千保さんは語ります。

 現在は、ストレスチェック分野における大学との共同開発にも取り組んでいるそうです。今後もプロダクト開発だけでなく、R&DやM&Aの動きを加速させつつ、更なる事業拡大を目指していきたいと、千保さんは意気込みを語りました。

 溝田さんからはM&Aについてコメントが送られました。

 トルビズオン:“上空のシェア”で、空に更なる価値を

 続いて登壇したのは、トルビズオン代表取締役社長の増本衛さん。同社は、ドローンを飛ばしたいユーザーが、飛行可能な上空エリアを見つけられるサービス「sora:share S MARKET」などを開発・運営しています。

 民間人が日本の上空でドローンを飛行させるためには、上空の下に位置する土地所有者の理解が必要です。「sora:share S MARKET」は、合意取得のハードルを下げるとともに、ドローンを飛ばしたいユーザーと土地をドローンユーザーに有料で貸し出したい所有者とを結びつけるサービスだと言います。

 また増本さんは、もう一つのサービス「sora:share S ROAD」の開発・運営を通じて、ドローンによる物流の促進にも貢献していきたいと語ります。

 増本さん「部分的な土地所有者の合意だけでなく、より広い範囲でのまとまった理解も得やすくなれば、ドローンによる流通も活発になるはずです。鉄道会社や航空会社などとも連携し、広い地域での理解を獲得することで、一本でも多くの“空の道”を開拓していきたいと考えています」

 コメンテーターの眞鍋さんからは、「事業を展開していった先に起こりうる潜在課題に対しても、ソリューションをある程度想定・議論しておけると、事業の持続可能性がより高まるかもしれません」とフィードバックを送りました。

 SWAT Lab:世界中のエキスパートをチーム化し、新しい働き方へ

 最後に登壇したのは、SWAT Lab代表取締役CEOの矢野圭一郎さん。同社が提供する「SWAT Lab」は、世界中のエキスパートを一つのプラットフォーム上に集結させ、クライアント企業の課題解決をサポートするためのSaaSです。

 SWAT Labのプラットフォームには現在、開発者やマーケター、データ・サイエンティストから学者まで、世界中からさまざまな職種のエキスパートが参加している。ユーザーとなる企業担当者は、同サービスに自社の課題を登録することで、こうしたエキスパートたちから解決に向けたアドバイスを得られると言います。

 矢野さん「テクノロジーの発達などが要因となって、ビジネスにおける変化のスピードは加速度的に上がっています。そうした変化に適応するためには、社外のエキスパートによるサポートも欠かません。私たちはそうした背景も踏まえながら、世界中のエキスパートたちが専門分野を越境し、よりコラボレーションしやすい状態を実現したいと思っています」

 一方で、ユーザーとなる企業に対しては「SWAT Lab」を通して、組織のDX促進や先端領域の概念実証、人材開発の高速化など、幅広い貢献を実現していきたいと意気込みを語りました。

 コメンテーターの照沼さんからは「内部リソースが潤沢ではないスタートアップ企業にとっても、有意義なサービスになる可能性があります。」というコメントが送られました。

 ベンチャー・スタートアップのみならず、大企業の担当者からも視聴された本イベント。コメンテーターからの鋭い指摘も得られ、大いに盛り上がりを見せました。

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東京21cクラブ

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三菱地所が運営する「東京21cクラブ」は、ビジネス・アクセス共に利便性の高い東京駅前・新丸の内ビルに拠点を構え、国内外の先端スタートアップや大企業、その他様々なプロフェッショナル約600名が集うオープンイノベーションに特化した起業家支援コミュニティです。オンラインを含むイベントやセミナーなどを通じて、ミートアップなどの企業同士の交流の場を提供し、新規事業開発支援を行っています。

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